くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「BUNGO〜ささやかな欲望〜」

「BUNGO」(見つめられる淑女たち)

注文の多い料理店
監督は富永昌敬である。宮沢賢治の名作をアレンジした大人のラブストーリーで不倫している会社の上司と部下の物語になっている。

しかし、メッセージが見えてこない。森の奥の山猫軒に迷い込んだ二人の最終的な行き場が見えないのがちょっと残念。

石原さとみの相手役の宮迫が素人臭すぎて作品に入り込めない。もう少し演技演出をしてもらうか、映像に工夫がほしかった気がします。

<乳房>
思春期の少年の苦悩と目覚めを描いた三浦哲郎の原作作品だが、これはなかなか切ない甘酸っぱさが画面にでていてよかった。

監督は西海謙一郎である。
かな江を演じた主優が実に色っぽくて作品を盛り上げる。出だしの胸の隙間が見え隠れするショットからドキドキさせられる。胸が大きくなってくる主人公の少年寛次の揺れ動く心の描写がなかなかで、それがかな江とのひとときで元に戻る。この不思議な思春期のドラマがいい原作の味を見事に出していた気がします。

<人妻>
永井荷風原作のロマンティシズムあふれる作品で、映像的にもこった演出がなされ、谷村美月の人妻の清潔なようで艶やかなそれでいてちょっと危険なムードを漂わせる演技が抜群。

相手役の男が二重人格のように二人現れて心の葛藤を演じていく様がおもしろいし、布団の中で戯れる人妻の姿を格子にこぼれる光を利用した美しい映像が素敵。

ラストで、猿ぐつわをはめられた谷村の訴えかける視線、とちゃぶ台を挟んで見せる妙にセクシーなショットが見事な一本でした。
監督は熊切和嘉である。

「BUNGO」(告白する紳士たち)

<鮨>
岡本太郎の母岡本かの子の原作をもとに関根光才が演出した作品。初老の男に好意を寄せる橋本愛の演技がちょっと見所だった気がします。

寿司屋の常連の先生と呼ばれる初老の男湊に好意を持つ寿司屋の娘ともよ。たまたま、外出したときに出会い空き地で湊の過去を語られる。

どこか、うぶでさりげない色香を漂わせ始める思春期の少女を物静かな演技で見せる橋本愛がなかなかで、後半の3本の中では一番よかった。

<握った手>
山下敦弘監督が描く不可思議な物語。原作は坂口安吾。ふとしたことで一人のOLの手を握ったために、女心に奇妙な不安を持つようになった大学生が心理学を専攻する一人の女学生にことの次第を相談するという物語展開で描かれる。

握った右手が妙に茶色に変色し、ことの次第を分析されて納得した後元の状態に戻ってエンディングとなる。

心理学の教授にあこがれる秀才女学生を演じた成海璃子が不思議な見よくをはなし、大学生松夫が手を握ったOL綾子役の黒木華がほのかな大人のムードで物語を引っ張る。

どこか現実と非現実の狭間のような展開が魅力の一本でした。

<幸福の彼方>
林芙美子の原作を谷口正晃が監督をした感動作。なんといてもヒロインを演じた波瑠という女優さんが目を見張るほどに美形なのに終始うっとりする映画でした。

戦争で片目を失った男性との見合いシーンから始まり、この男性信一と結婚することになった絹子。ある日信一から自分に子供がいることを告白され、二人は子供に会いに行くことにする。

一両だけののどかな列車に揺られていく二人の姿でエンディング。夫婦の幸せの本質、女性の生き方などを問いかけるシリアスな文芸物でした。とにかく波瑠さんが美しい。うっとりするほどに着物が似合ったのが印象的な作品でした。