くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「愛すればこそ」「東京暮色」「箱根風雲録」

愛すればこそ

「愛すればこそ」
3作のオムニバス映画であるが、どの一本もこれという劇的な物語ではないし、淡々と展開してすっと終わるので正直どれもしんどい。

第一話は「花売り娘」監督は吉村公三郎。第二話「とびこんだ花嫁」は今井正、この二本まではそれなりにおもしろかったが、特に第三話「愛すればこそ」の山本薩夫の作品に至っては背後にピアノの音を流しながら、一つの家族の物語と淡々とメッセージオンリーで描いていくのはかなりしんどい。


「東京暮色」
さすがに小津安二郎はすばらいしい。具体的にあそこがそこがと言葉にできないほど映像が一つのハーモニーを漂わせて一つの芸術にして完成する。

たわいのない日常の家族の物語が小津安二郎にかかると非現実な一ページになるから全く不思議である。そして見ているうちにどこかに身の覚えのある自分の人生が見えてくる。そしてラストシーンでは何ともいえない感動におぼれている自分に気がつくのだ。

物語は父と娘が暮らす一つの家庭。冒頭、嫁にいった長女が帰ってくる。妹はなにやら遊びほうけていて、心配の種が尽きない。姉は夫とうまくいかないようである。一生懸命育ててきたはずなのに戸惑う父の姿、当時の典型的な現代少女になった反抗的な妹。そこにかつて父を捨ててでていった母が存在することがわかるところから物語はうねりをおびてくる。

淡々ととらえるフィックスなカメラアングルと背後にリズミカルに流れる音楽、効果音、そして、得意の無人のショットが不思議な間合いを映像に生み出してくる。

思い出してもたわいのない物語だが、映像自体が一つの音楽になっているのが小津安二郎監督作品の最大の特徴である。だからすばらしい。

ラストシーン、誰もいなくなった家から父が仕事に出かけていくシーンに無性に現実に引き戻される自分がいる。これが映画を芸術としてみた典型的な傑作である。


「箱根風雲録」
単純な娯楽活劇。荒っぽい脚本と見せ場だけの展開が心地よい大作でした。

どれが主人公か支離滅裂になりながら、一応歴史の1ページである箱根用水が完成するまでを描いていきます。

途中、資金難で危機になったり、悪代官が登場したりチャンバラもあり、恋もあり、人情もありとてんこ盛りのエンターテインメント。「黒部の太陽」の時代劇版のようなタッチで進むお話はまさに映画黄金期の娯楽映画。だから気楽に見ればいいのですが二時間以上あるうえに荒っぽい演出なのでしんどいところもちらほら。

とはいえ、壷を押さえた山本薩夫監督の演出はそれなりに見せてくれるが、ほかふたりの共同監督なので、場面ごとに演出がばらばらといえなくもない。とはいえ、やはり画面が映画になっているのはさすがだなと思いながら、こういうお話もあるんだと勉強をして終わりました。