くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「エージェント・マロリー」「アイアン・スカイ」

エージェント・マロリー

エージェント・マロリー
観客を無視した脚本が実にリズムの悪い作品になって完成したという感じ。単純に楽しめるアクション映画であるはずなのに、作っている側にしかわからない展開に終始し、主人公を演じたジーナ・カラーノのアクションにも目を見張る切れもない。しかも驚くほど魅力的でもないのだから周りに登場する男優陣さえ同じに見えてしまうのだ。

監督はスティーヴン・ソダーバーグなノアから、それなりにできても良さそうなものだが、脚本の悪さを演出でカバーできなかったという感じですね。

冒頭、主人公マロニーがとあるカフェへ。そこへやってきた男アーロンと格闘になりその場の青年を巻き添えに逃亡。彼に一週間前から彼女に起こった出来事を打ち明けていくのだが、何の信頼もない青年に自分の生死に関わる情報を与えてどうすんの?しかも、結局終盤で彼と別れてしまい、最後の解決はマロニー本人が敵の黒幕に迫っていく。なら、最初から自分でいけよという感じである。

過去に戻って細かいカット複雑に絡んだ陰謀を描写していくのだが、何ともテンポが悪く、脚本をすべて呼んでいるスタッフにしかわからないような展開になっている。つまり説明描写が希薄なのだ。独りよがりでスタッフだけがおもしろおかしくこの複雑なストーリーに酔っているのである。

その上、主人公の女優に魅力がない。ピチッとしたセクシーさもないし、超人的な身のこなしもない。ふつうのエージェントなのである。周りの組織がおそれる理由さえ見あたらない。だから人物にも魅力が見えてこないからストーリーがぼやけてしまっているのだ。

悪役一味にもカリスマ的な魅力がないので、どっちがどっちと思ってくる。唯一信頼できるマロニーの父さえも凡々樽人物でここでもキーポイントがない。

そんなわけで、軽いアクションなのに、だんだんしんどくなってくる。なぜか隣の外人は笑っていたが、どこがおもしろいのだろう?そんな映画だった。


アイアン・スカイ
全くばかばかしいほどのお話と、ここまでしていいの?と思うようなブラックな風刺満載のSF大作?をみてきた。楽しい。これだからこの手のB級大作(って矛盾)て好き。

月の裏側にナチスの残党の基地がある。それを見つけるのが50年ぶりに月面着陸をしたアメリカ。しかも大統領選の宣伝イベント。さらに黒人を宇宙飛行士にして送り込むという嫌み満載の冒頭から笑える。

黒人の宇宙飛行士が携帯電話を持っているというのもおかしいが、UFOを飛ばせるほどの技術がありながら、最後の最後のメカに携帯電話並の計算力が必要なナチスの最終兵器も笑える。

対する地球はアメリカを中心に戦争賛歌へ世論を巻き込み、核弾頭は平気で使うし、平和会議では北朝鮮が参加、しかも北朝鮮を完全にバカにしている。平和条約を締結して宇宙兵器は禁止のはずかどこの国も密かに打ち上げていて宇宙を漂っている。しかも、正直に守っているのがこの映画の製作国フィンランドというノリも最高。

全く、人類なんてバカな生物なんだと笑い飛ばし、表向きと本音はいくら規模が大きくなっても変わりはないと笑い飛ばすスタッフの笑顔が見え隠れする。

結局、ナチスは駆逐されたものの、世界規模、宇宙規模の各国の諍いはとどまらず、地球は次々と閃光があがって滅んでいく様を写す。途中で「博士の異常な愛情」よろしく右手が上がってしまう男のシーンやこの地球に閃光が上がっていくシーンなども見せてくれる。さらにエンドクレジットが終わりに近づくと地球の隣、火星にもなにやら宇宙船が。

映画の出来映えはどうであれ、とにかくここまで吹っ切れたらそんなものはどこ吹く風で、とにかく笑えばいい。アメリカ映画に無い感覚。皮肉られて苦笑いすればいい。人間なんて所詮この程度のものだということなんだよね。たかが映画じゃないの・・・。