くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「拳銃(コルト)は俺のパスポート」「豚と軍艦」

拳銃は俺のパスポート

「拳銃(コルト)は俺のパスポート」
話の切れ味が抜群にいい。日活アクション映画の中で隠れた名作と呼ばれる一本をみてきました。

ストーリー展開が実にスピーディで、見せ場を見事な配分と配置で見せてくる。所々のつじつまや矛盾を吹っ飛ばしてどんどん先へ先へ進んでいく物語は胸を透く思いである。これが娯楽映画だ。

最近の映画に完全に失われてしまったこのエッセンスを凝縮したエンターテインメントとしての映画がここに健在である。

冒頭、主人公上村がある親分の手下に頼まれて敵方の親分を狙撃。ところがその逃げる手はずに手間取ったために飛行機に乗り損ね、結局、二つの組が手を組んでしまって自分たちは追われる立場に。そしてクライマックスはなぜかだだっ広いところで二つの組の親分が車に乗ってやってきたところを一人で迎え撃つ。

クレジットの時から流れるマカロニウエスタン調の音楽が実にテンポよくて、途中で挿入されるバックミュージックも映像をリズミカルに盛り上げていく。

最初にも書いたが、ようく考えると矛盾だらけのつっこみ満載のストーリーなのだ。しかし、おもしろい。これが映画である。


「豚と軍艦」
今村昌平監督の名作。今までものがしていた一本をみる機会ができた。

噂通りの名作。画面全体からバイタリティがほとばしりでてきて思わず後ずさりしてしまう。これこそ今村昌平監督作品とうならせる一本でした。

場所は横須賀、米軍に媚びを売ったり利用したりしながら生きる人々の姿を一人のチンピラを主人公に汗ほとばしるようなリアリティで描いていく。

きらきら光るネオンの商店街をカメラがゆっくりと引きながらのファーストシーンに始まり、米軍の残飯を手に入れて豚の飼育という事業を始める地元やくざ。その利権やら米軍の軍人の囲いものになって生きる底辺の女たち。そのむんむんするような迫力に終始圧倒される。

そんな蒸せ返るような世界でひたすら成功を夢見ながら一人の女性を不器用に愛する主人公欣太の突っ走る青春ドラマもまた妙に爽快感はない。

クライマックスはトラックに積まれた豚が商店街で放たれてうめつくれる中で機関銃を撃ちまくる欣太のシーン。あるいは豚に死骸を食べさせてその豚を丸焼きにして食べさせられるグロテスクなど、全くそれぞれのショットもめまぐるしい重々しさが漂う。

主人公の恋人春子がこの町を離れて列車に乗るシーンでエンディング。難をいうとエンディングの位置が少しずれてしまった気もするが、さすがに見せてくれる一本でした。