くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「その夜の侍」「高地戦」

その夜の侍

「その夜の侍」
何ともカットのリズム、物語の構成のリズムの悪い映画でした。だからやたらしいどい。脚本が悪いのもあるけれども演出のテンポもよくない。結果、やたら間延びしたシーンばかりが繰り返される結果になった気がします。舞台劇としては成功したのだろうけど、映像にする才能はなかったのだろうか。

物語は妻をひき逃げされた健一とその加害者でやや異常な男木島の二人を中心に、健一の木島への復讐のドラマである。物語は単純なので、時間や空間を前後させて複雑な構成の作品にしようとしているが、いかんせん、それぞれのシーンが動き出さないから、物語が乗ってこないのである。

木島の異常な性格がもたらす犯罪じみた展開や、奇妙な周辺の人々。一方の健一も妻に死なれてから五年間も遺骨をちゃぶ台の上に載せ、最後の留守電の妻の声を聞く毎日で、狂ったように復讐に燃えているの設定なのにその鬼気迫るものよりのほほんとしたムードにしか見えない。

ただ平凡な話がしたいだけとつぶやく健一と、日々送られてくる脅迫状を忘れるかのように横暴な生活をする木島。描きたいイメージはわかるが画面から全く漂ってこない。俳優の選定は成功だと思うけれど演出の冴えが見えないのが残念。

ラストに健一が妻から禁止されていたプリンを顔に塗りたくって暗転。つまりなに?なのである。文切りのエンディングも締まらないのはそれまでの画面の弱さ以外の何者でもない。最低とはいえないが後一歩物足りないままの映画でした。


「高地戦」
朝鮮戦争の最終日、停戦協定の発効が12時間後ということで最後の無意味に近い最終戦をクライマックスに、北朝鮮と韓国が交互に征服するT高地を舞台に描かれる戦争ドラマである。

北朝鮮と密通している兵がいるということでその調査に赴いた主人公を中心に交互で征服していることを利用した北朝鮮と韓国兵士の絆や、その中でのプラトニックな恋、洗浄での指揮官と部下の確執などを描いていく。それぞれのエピソードが乱立しているかに見えなくもないのですが、戦争の悲劇を描くというクライマックスへの伏線としては十分な効果があります。

例によって、韓国映画の戦場シーンの迫力は見応え十分で、登場人物のキャラクターも明確に描けている。スケールの大きさは舞台が一つの高地に限られているために広がりはないものの、その分凝縮されたストーリーでひっぱていく迫力はなかなかのものです。

ただ、チャン・フン監督作としては前作「義兄弟」の方がよかったかなと思います。チラシでは傑作と紹介されていますが、さすがにそこまでは思いません。ふつうの戦争映画だったかという感想です。