くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「LOOPER/ルーパー」

ルーパー

久しぶりにタイムトラベル物の傑作に出会った気がします。おもしろいのはもちろんですが、めくるめくような迷宮の物語と組み合わせられたプロットのおもしろさ、さらに非現実的なシュールな画面づくり、そして、ハイスピードでカットをつないでいくオリジナリティあふれる映像演出にのめり込んでしまう。難をいうと、中盤で二人のジョーがそれぞれの行動を別にしているシーンが若干に間延びしている。この部分をもう少しシャープに切り替えしていけばさらなるレベルアップした映画になっていたのがちょっと残念。(ご存じかと思いますがこのBLOGはラストシーンまで書いています)

さて、物語は主人公ジョーは現代において未来から送られてくるループと呼ばれる抹殺すべき人物を抹殺し死体を処分するルーパーという殺し屋である。契約された時間にその場所(つまりトウモロコシ畑)で待ち、現れた瞬間に撃ち殺す。このシーンを、物語の前提としての設定を説明すると共に、ハイテンポで次々と仕事をこなす姿を描いていく。

そして、ある日、いつものように時計をチェックしてターゲットを待つ彼の前にいつもなら顔を覆われているはずのループが素顔で現れジョーを見つめ、一瞬の間で背中を向けてジョーの銃撃を避ける。そして、失敗したジョーが自宅に戻ると組織の追っ手が迫っていて、すんでのところで窓から飛び出したものの手を離してしまい落下。そして物語は少し前に戻り、再びターゲットを待つシーン。成功したシーンから再度同じシーン。今度はターゲットの視点で物語が展開。実は彼はジョーの30年後の姿。彼が過去のジョーを助け、物語は一気に30年間の話を語る。この構成のおもしろさに前半は一気に引き込まれる。

そして中盤、30年後の未来ではレインメーカーと呼ばれる謎のTK(念動力所持者)が世界を牛耳って、気に入らない人間をタイムトラベルで過去へ送り抹殺している。そしてジョーの愛する妻も殺されるのだ。そこで、過去に戻りレインメーカーの子供時代へ戻って彼を抹殺することを思いついた未来のジョーブルース・ウィリス)は過去のレインメーカーと思われる三人の子供を順番に抹殺しようとする。

一方の現代のジョージョセフ・ゴードン=レヴィット)は30年後のジョーが持っていたメモの印から、トウモロコシ畑の隅で暮らすサラに出会う。そこにはレインメーカーの子供時代の一人と思われる10歳の少年が一緒に住んでいた。ジョーは彼女らを未来のジョーから守ることを決意すると主に組織からの追ってから身を隠す。

未来のジョーと現代のジョー、さらに組織の追っ手、時間の繰り返しによる現代と未来の物語が交錯し、空に浮かぶ不思議な形の飛行機雲を使ったシーンの演出などオリジナリティあふれるめまぐるしいシーン展開がみられる。

そして、実はこの少年はTKで、しかも化け物のような力を持っていて、自分の身に危険が迫ると爆発的力を発揮することがわかる。つまり、この少年が探しているレインめーkーの子供時代なのだ。そして、組織の狙撃種を殺してしまった少年の前に、とうとう30年後のジョーが登場するというクライマックスを迎える。

少年の頬をかすった銃弾に少年の力が爆発。サラも30年後のジョーも空中に浮き上がらされ、今にも大惨事というところでサラの呼びかけが通じて少年は正気に戻る。トウモロコシ畑に逃げる少年。それをかばう母。30年後のジョーがサラの背後の少年をねらう。ここで現代のジョーがここから先の未来をみるという展開が実におもしろい。

少年をかばうサラに30年後のジョーの銃弾が。サラを殺され恨みだけを抱いて列車に乗る少年。彼は復讐のために悪の化身のように変わっていく。その未来を見た現代のジョーは、未来にレインメーカーが登場する原因となるのは30年後のジョーがサラを撃ち殺したことによるものだとわかり、それを阻止するために自らを撃つことで30年後のジョーを消し、少年を守る。そして、無事サラと少年が抱き合ってハッピーエンド。見事。

決して手を抜かず、徹底的に組み合わされた物語をラストシーンへ導いていく組立のおもしろさを堪能するのである。SF映画の醍醐味を味わえる見事な一本でした。