くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「地球、最後の男」「チェリーについて」

地球、最後の男

「地球、最後の男」
未体験ゾーンの映画2013の特集の一本で、ある意味一番期待のSF映画でしたが、不思議な陶酔感に包まれたものの映画全体がリズムを生み出してこないために、終盤はさすがにしんどくなってしまいました。

映画が始まると地球の軌道上で一人で生活する一人の男が目を覚ます。次の瞬間に画面は南北戦争の頃のアメリカの戦場のシーン。そして、激戦が繰り返されるシーンのあと再び宇宙ステーションで生活する主人公リー・ミラー大尉が地球と交信しながら任務をこなす姿が描かれる。まさに「2001年宇宙の旅」のボーマン船長のごとしである。

ところが、突然地球との交信が途絶え、何事かわからないままに取り残されたリー大尉。次第に孤独と生命維持装置が限界に近づく中、ひたすら正気を保とうとするが、いつのまにか6年の歳月がたつ。

一人の人物の姿と閉鎖空間の中の映像であるが、時に冒頭の南北戦争のシーンや地球上の美しい景色のショットが挿入され、意味ありげな老人や若者の話すシーンも入り込んでくる。しかし、そこになんのメッセージがあるのかがいつまでも見えてこないのがしんどい。

宇宙空間の青く美しい地球のショットと地上の自然の景色の美しい映像は目を見張るほど圧倒される。一時はステーションを飛び出して単身地球へ落ちていこうかと考えたりもするシーンなどもあるが、思いとどまったリー大尉の前に巨大なステーションが現れる。ドッキングして中にはいるとそこには巨大なコンピューターが設置され、レトロなパソコンやテレビも配置されている。そのそばにある書物を開くと南北戦争時代の挿し絵などが描かれ、人類の歴史はすべてこの巨大コンピューターに記録されるのみとなり、すでに人類は消滅、コンピューターがリー大尉を生命と認識、愛がすべてを生み出すと言うメッセージが流れてエンディング。

哲学的なテーマを盛り込んでいるのでしょうが、どうしても「2001年宇宙の旅」とかぶってしまうし、比べてしまう。

正直、最後の最後でこの映画のメッセージは理解することはできなかった。クライマックスの場面も自分なりの理解であり、違っていたら指摘してほしいと思います。原題は[LOVE」でした。


「チェリーについて」
チラシの宣伝によれば、ヌードモデルからポルノ女優に墜ちていく一人の少女の人生の没落の物語かと思っていたら、そんなことはない。一人の少女が自立していく成長の物語で、前向きな作品でした。

主人公アンジェリーナは飲んだくれの母と暴力的な父親の家庭に育つもののまじめな少女である。しかし、友人の薦めでヌードモデルの仕事に手を出す。最初はお金が少し儲かるという程度でしたが、それは彼女の自立心に火をつけたような形になる。

友人でホモセクシャルのアンドリューと一緒に家出をし、アンドリューの恋人のパコとシェアハウス暮らしを始める。
そこでアンジェリーナはチェリーという芸名でポルノ映画に出演し始め、さらにちょっとイケメンだが薬物依存の彼氏もできる。さらにポルノ映画のADの女性からも好意を持たれていく。

中盤で視点がADの女性やら彼氏、さらにアンドリューへとやや散漫な展開になるところは気になるのだが、ポルノ映画撮影シーンも非常に品のよい演出が行われているし、ホモセクシャルのアンドリューのキャラクターも実にピュアな存在として描かれている。

アンジェリーナの母親が訪ねるシーンもそれほどのどろどろした描き方をせずにさらりと娘の成長をみて身を引くという展開も好感。

最後はADの女性と同棲を始め、今度は撮影する側になってカメラの横に立つ自立したアンジェリーナのショットでエンディング。

全体がすっきりとした演出を徹底し、解説にあるような暗いイメージの作品に仕上げていないのはよかったかなと思いますが、アンジェリーナを演じたアシュレイ・ヒンショウという女優さんがやや好みではないというかそれほど幼く見えないのがちょっと個人的に残念かな。ただ、映画としてはそれなりによくできていたと思う。