くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「渾身 KON-SHIN」

渾身

「うん、何」の時からファンの錦織良成監督の最新作。隠岐の島に伝わる古典相撲を題材にしたほのぼのした家族愛の物語。とにかく、真面目一本で最後まで押し切ってくれる作品でした。でも二時間を超えるにも関わらず結局、ぜんぜん退屈になることもなく見終わりました。その意味ではなかなかの佳作だったかなと思います。

主人公とその娘の物語を中心に、かつて不義理をして島をでた主人公英明が帰ってくる。そして、精進の末、この島に伝わる古典相撲の正大関という大役に抜擢されて今にも取り組みを待つ場面から物語が始まる。

妻と死に別れ、一人娘を育てる主人公は島で亡き妻の親友多美子と再び結婚することになる。主人公を囲む島の人々の暖かい心。伝統芸能を通じて結束する人々の素朴な人情。それらが、現地の人々を使ったリアルな古典相撲のショットを頻繁にはめ込んでいくことでしっかりと地に着いたストーリーになっていく。

主人公がふるさとの島で人々に迎えられ認められ新しい人生へ踏み出していく再生の物語なのだが、そんなシンプルなストーリーの周りにちりばめられた古典相撲という伝統芸能のしきたりや物語が二時間を超えるドラマを非常に奥の深い内容に仕上げています。その挿入のタイミング、長さ、それらはさすがに錦織良成監督の手腕が光る部分で、これまでの作品同様、どこがどうという表だったテクニックなど使わずに感性だけで導いていく演出は毎回頭が下がる。

ある意味、平凡な一本かもしれないけれど、こういう平凡な映画を平凡に作りだし、それでいて観客をスクリーンに釘づける才能をもっと若い監督は勉強すべきだと思う。とっても好感な一本でした。善かったなぁ。