「アルバート氏の人生」
14歳の時から男性になることを決め、ホテルの給仕として生活する一人の女性アルバートの半生の物語。
非常に静かで地味な展開が続く物語で、冒頭の舞台と登場人物の紹介のシーンも淡々と進む。アルバートが抜きんでて仕事ができるわけでもなく、ただ、長年努めている故の信頼と段取りの良さが見えるだけ。床下にチップをため込んでいずれ自分のたばこ店を持ちたいという夢を持っている。
そこに、たまたま一人のペンキ塗りの男ヒューバートがやってくる。アルバートの部屋に泊まることになったが、なんとそのペンキ塗りはアルバート同様女性であった。しかも、自分は男性として女性と結婚しふつうの夫婦生活をしているという。
その姿に曳かれたアルバートはメイドの女性ヘレンとの夫婦生活にあこがれ始める。
美しい景色のショットや、ホテル内部のシーンは実に美しく、物静かにほのかな幸せを望むアルバートの生き方がいつの間にか静かな感動として胸に伝わってくる。
結局、ヘレンがつきあっている青年ジョーとの諍いに飛び込んだために頭を打ちそのままあっけなくベッドで死んでいくのだが、このラストが本当に切ない。そして、チフスで妻を亡くしたヒューバートはアルバートの意志をくんでアメリカに去ったジョーに子供を授けられたままに捨てられたヘレンと一緒になるかのようなムードでエンディング。
ラストにほんの少しスパイスの利いた演出がなされ締めくくればすばらしい佳作になった気もするが、これはこれで静かにフェードアウトするように終わるのもよかったかもしれません。上品ないい映画でした。
「ブラッド・ウェポン」
ダンテ・ラム監督の香港映画。例によって派手なアクションシーンが次から次へと展開する。しかも、ストーリーそっちのけでどんどん繰り返されるので、しまいには飽きてきて眠くなってくるのだからそのしつこさは尋常ではない。しかも、これまたいつものようにつっこみどころ満載で、瀕死の重傷のはずが次のシーンでは走り回るし、海に飛び込むし、いつのまに防弾チョッキ着たの?という展開。
物語はヨルダンに始まって、なにやら天然痘ウイルスをもとにした細菌兵器の略奪戦から始まり、確か主人公ジョンの恋人アイスがその銃撃戦で死んだはずだが、そんなことはいつの間にかアクションシーンの彼方へ。そして生き別れの兄弟愛の話、警察の裏切りの話、親子の確執の話、とどんどんあちこちに広がっていく。その合間合間に派手な銃撃戦。あれ?ウイルスの話は?と思っていたら終盤で再び登場。一人娘のセンに天然痘のウイルスが注射されるというちょっとひどすぎる展開はあんまり。
さて、クライマックス(といってもそれまでのアクションシーンと変わらないが)、敵のショーンは早うちらしくて、ヨンとジョンの兄弟が同時に撃とうということになったが、ジョンが先に飛び出して、それでは作戦の意味がないやん?とつっこんでも、うまく大団円を迎える。
まぁ、最後はジョンが死んでヨンと娘のセンは無事母のもとに寄り添ってエンディング。
おもしろいというより、これが香港映画だねとニヤついて終わりました。