くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「カラカラ」「さよならドビュッシー」「ストロベリーナイト

カラカラ

「カラカラ」
「Keiko」から30数年ぶりだろうかクロード・ガニオン監督作品を見るのは。でも、今みても独特の個性が存在するのは見事なものだと思いました。

題名にあるカラカラというのは沖縄で泡盛を入れるお銚子のようなもので、空っぽになると中に入っている陶器の玉がカラカラとなって空っぽであることを告げるという品物のこと。夫の暴力から逃れ心が空っぽになった純子と望まぬ結婚ながら妻に先立たれ息子からも疎まれ、教え子からも見下されて安らぎと癒しを求めて沖縄にやってきたピエールの再出発の物語なのです。

と、見終わってから書くと分かりやすいですが、前知識なしに見始めるととんでもなく驚く展開になっている。

沖縄の夜明けの美しいショットから映画が始まる。カナダから日本にやってきたピエールが気孔を体験し屋上でお風呂につかって海を眺め、ゆったりとホテルで過ごすシーンから物語がスタートするのです。

那覇に戻った彼は友人と別れ一人沖縄を回ることにしたが、そこで日本の女性純子とその友人と出会う。英語に堪能な純子は友達の薦めもあってピエールのガイド役に。ところが初日にピエールとSEXしてしまう。絶叫をあげて行為をする工藤夕貴のシーンがコミカルながら最後までスパイスになるからうまいなと思う。

一見、ほのぼのしたロードムービーになるところだが、いきなり純子は夫のDVにあっていることが判明、夫がピエールたちの車を追いかけるシーンまで登場する。さらにピエールもカナダでの生活での影をうちあける。

蛇皮線の演奏を主体にした音楽を背景に美しい沖縄の景色をとらえ、時折米軍基地を話題にしたりしてエキゾチックながら日本的な静かさのある沖縄の姿を挿入していく。

そして、二人がそれぞれに観光しながら少しずつこれからの未来へと自分を変えようとしていく姿が静かな展開で語られるお話は本当に心地よいほどにテンポがいい。

芭蕉布と呼ばれる人間国宝平良敏子の工房をたずね弟子入りすることを決めるピエール。一方の純子は夫と別れ息子サラルと暮らすことになる。二人はそれぞれに未来をつかみピエールはバスに乗って沖縄の土地を走るショットでエンディング。

沖縄の名所をカナダ人の目でとらえながら、現代的な問題点にも目を向け、そこにドラマを作り出してさりげないロードムービーとして仕上げたクロード・ガニオンの脚本が実にすばらしく、ふつうの映画のようでオリジナリティあふれていることに気がつく。これもまた映画の一つの形なのだと感慨に耽ることのできた一本でした。


「さよならドビュッシー
このミステリーがすごい、大賞に輝き、今注目の橋本愛主演のミステリーを見ました。監督は利重剛です。

30数年前にみた「Wの悲劇」以来、邦画のモダンミステリーの傑作に出会った気がします。ものすごく良かった。

利重剛監督の映像演出がまず抜群にすばらしい。カメラを縦横無尽に移動させるだけでなく、一気に天井から見下ろすショット、さらに遥がルシアであることを告白するクライマックスのコンサートの控えの間での岬洋介との鏡を使ったテクニカルな映像演出、さらにコンサートの予選シーンでピアノの前に座る遥が弾き始める直前の心臓の鼓動の効果と一気に始まるピアノ曲の緊迫感あふれる一瞬の演出などあちこちに計算され尽くされたテクニックが駆使されているのである。

しかも、カメラの光の使い具合も非常に上品で美しいからシーンシーンがとっても上品に見える。裕福な家庭のドラマであるからそのあたりをきっちりと配慮された空間演出がうまいのである。

そして、抜きんでてすばらしいのがキャストである。主演の橋本愛はもちろんだがミッキー・カーティス、清塚信也という本物のピアニストを起用した迫力ある演奏シーンは見所である。しかも、法律試験をトップクラスで合格したというインテリな人物を見事に演じている。

遥が命をねらわれる階段、松葉杖、シャンデリアなどのシーンをさりげなく犯罪のにおいを漂わせるカットに絶妙のタイミングで岬洋介を挿入するあたりの心肉い。

あくまでミステリーなのだがそのあたりの味を薄め、遥の正体がルシアであるラストシーンの告白は切ないほどにすばらしいのである。

もちろん、まだ未完成な部分もないわけではないのですが、そんな欠点を覆い隠すほどに非常に完成度の高い傑作に仕上がっていたのです。本当に良かった。


ストロベリーナイト
テレビシリーズもおもしろいし、嫌いな竹内結子さえも魅力的に感じるシリーズなのでちょっと楽しみにしていました。しかも、監督は佐藤祐市なのですからそれなりに出来映えを期待もできるのです。

物語は原作があるものなのですが、とにかく二時間半近くある作品ながら決して飽きることなく最後まで引き込んでくれました。決して、映像にこだわったことはしていませんが、テレビシリーズのおもしろさとスクリーンにするという意識もしっかりなされ大画面に見合う構図と演出を見せてくれたのはうれしかった。

キャストはテレビシリーズ同様であるが、もともとしっかりとした俳優さんが演じていたのでその点も問題なく、犯人役にも配慮した配役で十分楽しめる娯楽映画でした。

次々と殺人事件が起こる様を細かいカットで見せて導入部からタイトルへ。あとはおきまりの展開になっていきますが、今回は竹内結子扮する姫川が大沢たかお扮する牧田と体をあわせるシーンが登場、さすがにこれはテレビでは写せませんね。まあ、必要だったかどうかはともかくこれもエンターテインメントとしての映画作品のお遊びであってもいいかと思います。

事件解決後姫川班は解散となり物語はエンディング。ミステリーのおもしろさは十分な無難な出来映えだったと思います。おもしろかったなぁ。