くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ムーンライズ・キングダム」

ムーンライズ・キングダム

ウェス・アンダーソン監督作品は「ファンタスティックMrFOX」しか見てませんが、いやぁ楽しかったです。まるでおとぎ話のようにリアルで毒のある物語がぽんぽんと展開するのはもう癖になりますね。「ファンタスティックMrFOX」よるずっと良かった。

物語はサムとスージーという少年少女のラブストーリーなのです。それがまるで絵本を眺めていうかのような映像で語られていくのだからたまりません。

左右対称のシンメトリーな構図を徹底し、カメラも真横や奥から手前、手前から奥と直線でパンを繰り返す。そして、せりふにちりばめられた大人びた風刺に満ちたウィット満載の言葉遊びの数々や、スペクタクルなシーンをミニチュアにしたような見せ場の数々、そして一瞬、広々とした不思議なカットなどなど、創造力の限りを駆使した絵物語が続いていきます。

映画が始まると一枚の絵のアップからカメラは右に左に奥に手前にとパンしながらスージーの家の中の様子を映していく。時折双眼鏡でこちらをのぞくスージー。この家もまるで絵本の中のような原色を多用したファンタジックな姿をしている。

そして真っ赤な服を着たおじいさんがこれから舞台になる島を説明し、物語はボーイスカウトのキャンプ場へ。

クスっと笑えるせりふとシーンが繰り返されながら、このキャンプに参加している少年サムが行方不明になるところへと物語が進むのです。そして一年前、このサムはとある日曜学校の学芸会で一人の少女スージーに一目惚れ、二人で脱出しようと計画し実行に移したのです。

スージーがのぞいていた双眼鏡はサムを見つけるためで、二人は草原で落ち合います。ここから二人の逃避行。彼らを追う大人やボーイスカウトの少年たち。中心は子供たちだが展開は大人のアクションなのでそのアンバランスが実に楽しい。しかもカメラは終始、縦か横、奥か手前にしか動かない。

翻弄される大人も滑稽に見えるし、とにかく風刺だらけのカットまたカット。一度は連れ戻されるも、仲間たちの助けで再度二人は脱出。そして台風が迫ってきたというサスペンスフルな状況設定がさらに緊張感を生み、物語はクライマックスへ。

そして二人はめでたく仲を認められ、孤児で帰るところのなくなったサムも保安官の養子に。こうして、それなりに収まって物語は終わる。ブルース・ウィリスが警部役にエドワード・ノートンボーイスカウトの隊長、ビル・マーレイがスージーのお父さん役と配役陣も楽しい。

エンドクレジットでも管弦楽の音楽が説明されて最後まで流れるしとにかく楽しい。物語の中でもいろんなバージョンの曲がさりげなく画面を潤していくし、機関銃のように発射されるせりふの数々もいつの間にかリズムに聞こえてくる。何とも個性的な映画であることだろうか。これは文章で説明できない魅力がありますね。本当に楽しかった。