くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ダイ・ハード/ラスト・デイ」「ゼロ・ダーク・サーティ」

ダイ・ハードラストデイ

ダイ・ハード ラスト・デイ」
この映画も回を追うごとに薄っぺらくなってくる。もちろん派手なアクションを見せればいいのかもしれないが、今回に至っては物語自体が成り立ってさえいないのだからもう参ってしまう。しかも、陳腐なせりふの応酬でなんの面白味も深みもない。もうこの辺でやめてほしいかな。

ロシアで大物政治家のスキャンダルをつかんでいるファイルを持つ一人の男が逮捕される。その男を抹殺するために政治家が奔走を始める。そんな中ジョン・マクレーンの息子ジャックがロシアで逮捕されたためにジョンがロシアへ。

ところがこのジャックはCIAで、今回の事件の証人を脱出させるために逮捕されたのである。ところが、作戦途中でジョンと遭遇、そのため計画がくるって・・とこの導入部がなければこの作品の物語が成り立たないのだが、もしジョンがいなかったらという本来の物語を無視している。本当に甘いストーリー構成である。

ただ、この後はもう爆破シーンと銃撃戦の連続で気がつくとラストシーン。当然、ハッピーエンドだがここまでくるとエンターテインメントと言うよりドタバタ劇である。結局、このシリーズは第一作だけが傑作で、後はどんどん凡作の道を走っている感じですね。

そんなこんなぺらぺらのエンターテインメントですが退屈もなく、眠くもならなかったのだからいいとしましょう。


ゼロ・ダーク・サーティ
アカデミー賞ノミネートされているキャスリン・ビグロー監督の話題作である。

9・11の出来事が黒バックで実況されてその二年後から物語が始まる。CIAが不屈の精神で執拗にオサマ・ビン・ラディンを追いつめていく様が徹底的なリアリティで語られていくが、その根底にあるのはアメリカの威信である。そのくどいほどのアメリカという存在感のアピールがとにかくしまいには鼻をついてくる。

主人公マヤが同僚と食事をしているレストランが爆破され九死に一生を得るシーンまではかなり淡々と進むのでしんどいのであるが、このショッキングな爆破シーンで一気に目が覚める。そして、重要人物との会見を約束させた同僚ジェシカがパキスタンの米軍基地で自爆テロで死んでしまい、俄然ラディンを追いつめることに執念を再燃させるマヤの行動がここからのサスペンスフルな展開へとつながっていく。

クライマックスはオサマ・ビン・ラディンの家を特定して深夜突入していく場面だが、この部分に後半の大半を割いて徹底的に観客をくぎ付けにしてしまう。確かにスリリングだし、結果が分かっているにしても緊張感が途切れることはない。しかし、同じ実話を描いた「アルゴ」と決定的に違うのがこのクライマックスに至る後半部分である。完全に娯楽よりも賞を意識した作りになっているのがちょっとくどい。

それとマヤを演じたジェスカ・チャスティンが今一つ迫力に欠けるような気がする。実際の人物がどうかは知らないのですが、映画としてストーリーを語る上ではちょっと弱いのではないかなと思ってしまうのです。切れ者のという表現も後半にみられるのにそのあたりの存在感はほとんどない。

史実を証言に基づいてしっかりと映画として完成させた点では非常に完成度の高い作品であり、爆破テロの現状を物語の的確な位置に配置した構成のうまさも評価するところがあります。ただ、最初にも言いましたがアメリカの威信を傷つけられた9・11にたいする報復と威信回復が徹底的に描かれていて、人間描写はほとんど行われていない。冒頭のアラブ人を拷問する場面でもマヤの苦悩はほとんどないし、親友が死んだ後の感情の動きも非常にクールに描いている。あくまで主人公はアメリカ国家なのだと言わんばかりである。その点だけがちょっと気になったかな。アカデミー賞を争うほどの作品には見えないと思えるのもそのあたりにある気がします。