くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「レッド・ライト」

レッド・ライト

「リミット」のロドリゴ・コルテス監督作品。30年ぶりにカムバックした伝説の超能力者サイモン・シルバーとの対決を描くサスペンスミステリーである。

正直、素直におもしろかった。緊張感あふれる細かいカットの連続と、縦横に駆使したハイスピードのカメラワークのコラボレーションが前半から一気に物語にスピード感を生み出して引き込んでいきます。細かい人物の設定やいきさつをほとんど説明せず、また理解する暇もなくどんどん物語が前に進むのがなんとも小気味よい。

映画はとある郊外の家に主人公トム・バックリー博士とその師であるマシスン・マーガレット博士が乗り込んでくる。これから行われるのはこの家に起こるポルダーガイスト現象を交霊術で解決するに当たりそれに参加してペテンを暴くのが目的である。見事、真実を暴いてタイトルへ進む。シャープな導入部です。それにしてもシガーニー・ウィーバーは歳とったなぁ。

さて、物語はあらゆる超常現象は基本的にトリックであるとするマシスン博士とトムのコンビと30年前にマシスン博士を打ち負かし姿を消した伝説の超能力者サイモン・シルバーとの対決である。

マシスン博士には昏睡状態で眠り続ける息子がいてトムにはサリーという恋人がいるがそれぞれはあまり細かい人物説明を行わない。それよりも、ヒッチコック映画を思わせる意味深なショットが次々と挿入され、不気味な怖さをあおってくる中盤からの展開がとにかく緊張が途切れずにおもしろい。

マシスン博士が電話をとると無言で、そのあとコップのスプーンが曲がっていたり、トムがとった無言電話の背後からそんだ鳥が飛び込んできたり、トムが車で轢きかけた老婆がトムを罵倒するという「サイコ」のワンシーンを髣髴させるシーンもある。そしてそれらがサイモン・シルバーがおくった念動力ではないかと思わせぶりシーンがどんどん恐怖感を募らせていきます。

サイモン・シルバーの舞台に単独で乗り込んだトムのスタジオが次々と破壊され、続いてマシスン博士が突然死する。はたしてサイモン・シルバーは本物なのか?

それが頂点に達したところで彼を大学の研究実験にすることになる。ところが全くぼろが出ないまま、突然サイモン・シルバーは再び引退宣言し、最後の舞台へ。ここからがクライマックスであるが、正直かなり荒っぽいといえば荒っぽい。

実験のビデオをトムの助手がチェック。突然現れたこの助手の説明もないままにトムはサイモンとの対決へと最後の舞台へ。ところがそこで怪しい男にトイレで暴力を振るわれる。前半でマシスン博士が捕らえた謎の男であるかと思う。このあたりちょっとありきたりで、ストーリー展開に息詰まった感じがするのがちょっと残念で、一方でトムの助手とサリーがサイモンは実は目が見えていたのだという真相を発見するも、これも唐突過ぎてやや弱い。

そして、最後の最後、血だらけのトムがサイモンの前に現れると、ふたたび場内はライトが破壊され屋根がきしみ、またもサイモンの仕業かと思いきや、実はこれはすべてトムの仕業で、本当はトムは本物の超能力者だったという落ちで締めくくる。そういえばそれまでも自分で自白していたシーンがあったなとフラッシュバック。超能力を暴くマシスン博士の助手が本物の超能力者だったというどんでん返しなのですが、ラストはいまいち息切れした感じですね。それでもシーンごとのモンタージュやカットとカット、カメラワークとカメラワークの組立のうまさは絶品のサスペンスであり、その点では十分評価できる秀作だったと思います。荒っぽい展開がちょっと気になるものの本当におもしろかった。