くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「悪人に平穏なし」「八月の鯨」

悪人に平穏なし

「悪人に平穏なし」
体調が悪いのか映画が退屈なのか、最初から最後まで眠くて眠くて参ってしまった。

始まったとたん、一人のおっさん、主人公サントスが閉店のバーで追い出される。そして二件目のバーでもいやな顔をされ警察手帳をさして一杯飲むがそれをこぼしてしまう。そこへ店長らしい男が近づいてきてその男を殴り倒し、バーテンを撃ち殺し、逃げる女を撃ち殺す。??
そしてその証拠隠滅のために録画していた防犯ビデオのディスクを見ていてその場から逃げた一人の男を追ううちにテロ計画を知りその解決に一人奔走し始める。

と思っているとこの殺人現場に女判事たちがやってくる。そして捜査を始める。この女判事の捜査の物語とサントスが捜査していく物語が交互に描かれるが、その目的、原因となる物語の骨子が見えてこない。というか、わかりにくい。まるで香港映画の展開手法なのだが、あちらはもう少し次第に説明が見えてくるのだが、こちらはどんどん前に進むだけなのだ。

そして、テロ計画の男たちが消火器に爆弾を仕掛けてショッピングモールに設置。一方サントスはその男たちのアジトに踏み込んですんでのところで爆破のリモコンを入手するも、戦いの途中で刺されてそのまま死んでしまう。

そこへ女判事がやってきてサントスの死を見つける。映像はショッピングモールの消火器が次々と写され、処理されないままに「悪人に平穏なし」とテロップが流れる。

非常に面白い物語なのだが、人物の整理が見えなかったために混乱してしまった。


八月の鯨
淀川長治が絶賛する名作のニュープリントを見る。リリアン・ギッシュベティ・デイヴィスといういわばアメリカ映画界の巨人のような二人の大女優が語る人生の機微、生きるということの美しさを謳歌したような見事な映画でいした。ただ、淡々と進むストーリー、物静かに徹したストーリー展開はさすがに静かすぎて悪くいうと退屈と呼べるものかもしれません。

モノクロームでこの物語の主人公セーラとリビーの姉妹が小さな島の別荘ではしゃぐシーンに始まる。程なくして画面はカラーに変わり、二人はもうよぼよぼの老婦人である。そこにロシアの貴族でもあったマラノフ氏(ヴィンエント・プライス)がやってくる。近所にすむ幼馴染ティシャや修理工のジョシュアなどがおりなす日常の姿は、どこか何ともいえない深みのある彼らの歩んできた人生の機微を伺わせるのです。

マラノフ氏が釣った魚を食するシーン。セーラが亡き夫との結婚記念日を一人で祝うために赤と白のバラをさしてワインを飲むシーンの美しいこと。また、何かにつけつよがりをいったり、わがままを言う姉リビーの姿もどこか切なささえ感じ、そんな姉を優しく支えるセーラもまた暖か人柄を見せる。

主人公二人のみならず周りに集まる人々もみなこれまで生きてきた長い人生の歩みを切々と画面から漂わせる。それは脚本のすばらしさか演技の迫力か、はたまた演出の妙味か。そこに存在するのは昨日今日人生を知った程度の人間では決して描ききれない、人生の年輪を重ねてきた人間だけが表現することができる物語なのかもしれません。

ラスト、姉リビーの手を引いてセーラが外にでて崖から海を眺めるまでのまるで一遍の詩のような映像がため息がでるほどに美しかった。

手を引くセーラ、棚に並ぶ食器、ドアを開け外にでる二人の足下、そして遙か彼方に見える広い海。「鯨は見える?」「もう行ってしまったみたいね」・・・これが名作ですね。