くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「メモリーズ・コーナー」

メモリーズ・コーナー

阪神淡路大震災から15年、外国の記者が被災地を訪れて感じるところを記事にするという物語を中心に、今なおその地に残る深い悲しみを映像を通じて描き出した作品である。

ある一軒の復興住宅の部屋に救急隊員が到着するところから映画が始まる。「石田さん」と叫ぶ声、孤独死したらしいシーン。

続いて、外国人記者が震災の模様を描いた映像を見ている。主人公でフランス人記者アダが復興住宅の管理人、西島秀俊扮する通訳岡部とともに復興住宅へやってくる。そして、一軒の家に入り取材しようとするがそそくさと切り上げてしまう。その家の男石田はアダに何やら話したい様子をみせ、帰りにお守りを手渡される。

岡部たちが躊躇する様子に納得がいかないままアダは一人で石田と会うのだが、岡部はアダにあることを説明する。

途中でだいたいわかってくるが、実はこの石田は映画の冒頭で孤独死したおとこで、アダが会っているのはその亡霊なのである。震災で無念で死んだ人々は大切なものをお守りにたくし、旅立ちの直前に生きる人に手渡していくのだと知る。

かつて、仮設住宅のあったところに鯉のぼりの群で泳ぐショットを挿入し、夕日の中、旅立っていく亡霊たちに石田を加えていくラストシーンはややあざとい描写であるが、90分足らずの作品でコンパクトにまとめた手腕はかってしかるべきだと思います。ただ、内容はかなり薄っぺらいし、あくまで外人の立場で見た震災の視点という弱さがいたるところに露呈しているのは残念ですね。