「キャビン」
宣伝から鳴り物入りでそのおもしろさ、奇想天外さを売り物にしていた作品なので本当にいかほどのものかと見に来た。宣伝効果もあってか観客もそこそこという状態。
正直、びっくりするほどでもなかった。いわゆるスプラッターサスペンスなのである。しかもストーリーの組立が非常に雑で一貫性のない演出が中途半端に作品のムードをぶちこわしていく。まぁ、B級ホラーだと割り切って見るのだからそのあたりはあれでいいといえば十分。
単純に退屈することなく楽しめるが、どこかさめたシーンが繰り返されるのでそのたびに緊張がとぎれる。いったい真相は何なのだ、このあとなにがあるのだろうという思いだけでラストまで引きずられる感じである。
映画が始まると血を思わせるおどろおどろしたクレジットタイトルのあとなにやら近未来的なビルのシーン、学者らしい人々が次の計画がどうのこうのと話している。そしてシーンが変わると脳天気な若者四人プラス薬中の青年がいとこの別荘へキャンプに行くシーンになりメインタイトル。
どうやら彼らは冒頭の人々に監視され操られているらしい。そして若者たちは目的の別荘にたどり着き、そこで見つけた謎のほんの呪文を読むと彼らを監視する男たちがそこにゾンビを送り込んでいく。組織の人々の中では賭が行われたり若者たちが叫び殺される様を楽しんでいる。正義感に燃える黒人が一人いるがこの人物が結局、最後まで何のための存在したかわからないままだった。
結局、堅物の女性ディナと薬中のマーティが生き残り、すべての怪物を解き放つが、なんともお粗末なシステムである。そして、スプラッター満載に組織の人々も殺戮され血の海になる。生き残ったディナとマーティは最後に一人の女性に真相をあかされる。なんとシガーニー・ウィーバー。もう笑ってしまう。
実は太古の昔から封印している怪物を沈めるために生け贄を捧げているんだというが、これまでもこんなにめんどくさくやっていたの?という感じ。そして、今回失敗したので怪物がよみがえって映画は終わる。展開からラスト、種明かしも実に弱いし、結局なんだったのという感じである。まぁ、すっかり宣伝にだまされたように最後まで楽しんでしまった。B級映画なのだからこれでよいかな。それにしても先日の「レッド・アイ」といいシガーニー・ウィーバーはどうなのという感じである。
「アンタッチャブルズ」
ふつうのポリスアクションという感じの作品。本国で大ヒットしたといいますがそこまでという感じでした。確かに所々にちょっと変わった演出がないとはいえませんが、それを評価してもふつうの映画でした。もうちょっと二人のキャラクターをそれぞれ際だたせたらおもしろかったのですが、そのあたりアメリカ映画ならうまいのですがフランス映画としてはちょっと遠慮した感じでしょうか。ねらっているのは明らかに「ビバリー・ヒルズ・コップ」なのですから。
一人の黒人がなにやらカメラを構えているシーンから一気にカーチェイスへ、そしてタイトルと導入部はスピーディです。経済課の刑事ウスマスがいわゆる切れ者という設定ですがあっと驚くほどの人物に描けていない。
一方の女好きの捜査一課のフランソワがとぼけ役で一見出世一筋のクールなイメージなのに実は人情味があるという人間らしい人物像も弱い。
つまりこの二人がほとんど同じ列に見えてしまうので漫才のぼけとつっこみのおもしろさが生かされてこないのです。ラストの、実はフランソワの上司も黒幕だったというおちもふつうに終わってしまう。
途中、自宅待機になったウスマスが息子にスーパーでそれまでのいきさつを話すシーンはちょっと個性的ですが、この息子の存在も今一つ中途半端で物語に生きていない。
どことっても、並のレベルでとどまっているために全体に抑揚のある切れが見えないのですよね。おもしろくなりそうなのになりきれないという娯楽映画でした。