くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ウィ・アンド・アイ」「ブルーノのしあわせガイド」

ウィアンドアイ

「ウィ・アンド・アイ」
監督の映像センスが作り出す不思議で、どこか甘酸っぱくなるような青春ストーリーの秀作。いや、ストーリーというほどのものがないから、感性のみで描かれた一瞬の時を描いた映像作品という方が正しいかも入れない。

監督はミシェル・ゴンドリーである。

ラップ調の軽快な音楽とともにオープニング。ラジコンのおもちゃのバスが走るショットをバックにメインタイトルが写され、次第に本物のバスが画面に登場。気の強そうな太った女の運転手が操作するバスに、いかにも悪ガキっぽいブロンクスの少年たちが乗り込んでくる。ほとんどが黒人で、浴びせかける言葉はおそらくスラングなのだろうが、さすがにわからない。

老人であろうと、子供であろうと容赦せずに悪のりしてふざける。犯罪の一歩手前に近いほどの傍若無人ぶりである。そして、バスはラジコンのおもちゃをつぶして本編へ。

やりたい放題、言いたい放題のいたずらと暴言、友達を友達と思わない悪ふざけ。「PartONE悪ガキ」として物語が始まる。

主人公らしい人物は存在せず、ドキュメンタリータッチでバスの中からほとんどカメラはでない。少年たちがふざける様子を次々とカメラがとらえ、せりふを拾っていく。時折、一人の少年イライジャがバターに滑ってころぶ映像に少年たちが大笑いするシーンが繰り返される。16歳のパーティの算段をす少女、ひたすらスケッチする少年、ギターを持つ少年、ゲイらしい二人、キスをし続ける恋人。次々とカメラがとらえるが、それぞれがそれぞれにからかい、ふざけ、どんどんと映像が展開する。物語というものも特にないのである。

こうして、「PartTWO混沌」、PartoTREE私」とすすんでいく。バスは朝から深夜まで走り抜けていく。高速バスなのか、学校帰りのスクールバスなのかよくわからないのだが、一日かけていかないといけないところにすむ彼らの姿という演出かもしれない。

途中、救急車にでくわしたり、ピザを買ったり、やりたい放題で、大人たちを翻弄する悪ガキたち。しかし、一人また一人と降りて次第にバスの中が閑散としてくる。外は夜のやみに包まれ、最後のマイケルという悪ガキの一人とテレサという少女二人になる。しんみりと語る二人のシーン、バターで滑って笑われていた少年が、町で殺されたというメール、そして二人はバスを降りて語り合う。バスは彼方に去ってエンディング。タイトルが流れる。

全編、ハイテンポの音楽と、一見ドキュメント風であるが、しっかりと演出されたカメラワークが、軽快なリズムを映像として作り出していく。最初は、入り込めないほどの悪ふざけ映画だったが、次第に、まだまだ大人になりきれない彼らの、どこか危うい表情が見え隠れし始めるから不思議である。そして、ラストシーンではしんみりと残った二人を見つめている。

エンドクレジットでナレーションされる言葉の意味はちょっと分かりづらいのだが、個性的ないい映画だったような気がします。


「ブルーノのしあわせガイド」
本国イタリアでは話題になり、ヴェネチア映画祭でも評価されたらしいから、ちょっと楽しみにしていたけど、ふつうの映画だったような気がする。

ただ、ストーリー展開が終盤にかけて一気に畳み込んでいくので、見終わって、さわやかな気分になることは確かです。でも、映像にしても、物語の組立にしても、それほど抜きんでるほどの作品には見えない。

根は悪い人間でないが、学校嫌いのルカ。学校へ行く代わりにゴーストライターをしているブルーノのところで家庭教師をしてもらっている。ある日、ルカの母親が半年外国に行くことになりルカを預かってほしいと依頼される。しかも、ブルーノの子供だと告げるのだ。

こうして物語は始まる。どうしようもないルカはブルーノに逆らうばかりで、たちの悪い友人とつきあい始める。ブルーノも息子といわれたものの、今更という感じで放任している。

ある日、ボクシングジムで知り合った不良青年に麻薬をさばく仕事を友達と一緒に誘われ、どこか不審に思ったルカは、その青年の仕入先で、豪邸に住む男のところから金と薬を少量くすねてくる。当然、仕返しにくるが、ルカは怖くてブルーノに相談。公園で捕まり、あわやというところで実はその薬の元締めがブルーノの教え子で、ブルーノを尊敬していて、そのまま無罪放免。ここまでの展開が作品の大半を占める。

ここからルカは一気に勉強に精を出し、最後はそれなりの成績になるが、自ら落第のみとをとる。そして、ブルーノとルカの暖かい未来が見えるエンディングで幕を閉じる。

ブルーノのゴーストライター依頼人の一人でもとポルノ女優の女性とブルーノが懇ろになっていくラブストーリーも交え、よくあるストーリーである。

さらっと終盤まで持っていって、さらっとラストシーン。でてくる人物どれもが、毒のないキャラクターで、それが面倒な展開にならずに最後まで心地よくみれるといえば、そこがこの作品の最大の利点かもしれない。

今更というストーリーだが、あっさりとした演出が効をそうして評価されたのだろう。でも、私にはふつうの映画だったように思います。