くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「俺俺」「白い魔魚」

俺俺

「俺俺」
三木聡監督作品ゆえに、いつものメンバーが脇を固め、いつものナンセンスな映像がちりばめられているが、今一つ迫力がないのはやはり主演に持ってきた亀梨がすっきりし過ぎているせいだろうか?がんばっているが、ちょっと物足りない気がしないでもないし、麻生久美子が入っていない三木聡ワールドもちょっと寂しいかなという感じの映画でした。

巨大なニュータウン風の住宅のショットから映画が始まる。シンメトリーなカットの後、主人公永野均の一室。かつてはカメラマン希望だったが、今はその夢もどこ吹く風で家電量販店で派遣社員の日々。ふとはいったハンバーガー店、隣に座った遠慮なしのサラリーマンの携帯が自分のトレーに転がり込んで、そのままその携帯を拝借、そこへかかってきたその携帯の持ち主の母親からの電話に、思わずオレオレ詐欺を仕掛けてしまう。そして、90万円を手にした永野だが、家に帰ってみると、なぜかいつもの母親ではなくて別の女性が母親だと名乗る。

キャッシュカードでお金を引き出した後に白バイがじっと見つめるショットや、不気味というより、どこか乾いた笑いを誘う三木聡の演出が特徴的である。

そして、自分のうちだと思っていってみると、そこには自分と瓜二つの大樹という男がいて、なにやらおかしな雰囲気になっていく。なぜか自分にそっくりな男があちこちにいるという妙な物語がどんどんエスカレートいていくのだが、もう、理由などはどこにも説明されず、ひたすら三木聡のおふざけカットがふんだんに登場。

内田有紀扮する意味ありげな美しい人妻サヤカも、結局、何のために均近づいたのかもわからず、家の写真をたらせて意味も不明。そして、世の中は均の複製のような人物を殺すという削除という出来事がひろまっていく。
このあたりからちょっとブラックな展開になっていくが、今一つ毒の意味が見えてこないのは、意図したものなのか、迫力不足なのか不明。

結局、最後は90万円を大樹の母親に帰して、自宅に帰ると元の母親が出迎えてエンディング。といって、実は戻ってきたのは最初の均本人なのか不明なニュアンスも残しているが、これも一興で楽しんで終わる映画である。

三木聡の映画はもう少しはじけていたように思えなくもないのだが、まぁ、これはこれで楽しむことができました。


「白い魔魚」
東京で一人暮らしをして大学に通う女子大生竜子が、実家の岐阜の家の商売が破産し、それを救うために、会社を支援する青木という男と結婚する話が進んでいくという物語を中心に展開する。

しかし、その中心になる話に男のエゴイズムや、古き考え方から新しい時代へと移り変わる若者たちの意見の変化、さらには働く女性が社会進出してくるなかでの女性の意識の変化、さらに若い学生同士の恋愛、お金や愛情に対するものの考え方の変化などのエピソードがてんこ盛りに盛られたストーリーである。

結局、一本筋の通ったものが見えない作品に仕上がっているのであるが、松山善三の脚本は散漫になりきってしまわずに、抑えるところは丁寧に丁寧に最後までかかれているのはさすがである。

主人公竜子が車に接触され、けがをするところから物語が始まる。その車の主が女性社長篠宮が経営するブティックの車で、その社員吉見と篠宮の恋、その吉見が竜子の先輩であったりと、それぞれの人物が至るところで絡みあってストーリーがはじまる。

一見、いい人に見えた吉見も実は女癖が悪く、実家を助けるために竜子のことなど関係なく奔走する青木も、本音は竜子がほしいだけだったり、登場する男どもが最初はいい男なのだが、裏を返せばみな身勝手で、いい人物として描かれない。唯一、竜子の恋人重岡だけがラストまで潔癖を貫くが、それも、ストーリーの展開の中では世間を知らない青二才であるが故だといわんばかりである。

それぞれの人物のあれこれが、絡みすぎる感じで、結局、どこでやめても、そのままつづけても取り留めのないストーリーであり、プログラムピクチャーとして、何分でやめるかを自由にできる作品として見えてしまうところは、見方を変えれば、映画が作られた時代を感じさせる一本と言えばそうかもしれません。