くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「危険旅行」「いろはにほへと」「春を待つ人々」

危険旅行

「危険旅行」
とってつけたようなストーリー展開と何でもありのお話で、とっても軽いタッチで進んでいく、古き良き日本映画の娯楽作品の一本。
先日見た「集金旅行」の姉妹編ということですが、こちらの方が適当なお話になっています。

大人気の女流作家松平千賀子が、追いかけ回されるマスコミからある日逃げることを決意して、ゆくへをくらます。そして、名古屋の近くで車が故障してしまって、しがない新聞記者の旗と出会うところから物語が始まる。

あとは、観光映画のようなロードムービーで、脈絡なく、日本の名所名所がちりばめられ、そこで人情劇のようなどたばた劇が展開、これという場面づくりもなく、二人はやがて恋に落ちて、九州の平戸でむりやり結婚させられてハッピーエンド。

「集金旅行」よりさらに適当に作られた感じですが、これもまた楽しい日本映画の歴史を考えさせられました。


「いろはにほへと」
典型的な橋本忍脚本の金融サスペンスの傑作。映画が始まってからラストシーンまで、緊張感が途切れることなく、画面に釘付けになってしまいます。全く、すばらしいの一言につきる。

飲み屋街の一角、小料理屋で捜査二課の刑事松本が飲んでいるシーンから映画が始まり。一段落して夜の町へふらふらとでてタイトル。

彼はここ二年間、投資経済会という胡散臭い投資会社を追っている。今や70億の資金を集め、二十万人の顧客を抱える天野という理事長を中心にしたこの会社は飛ぶ鳥落とす勢いであるが、法律の網をくぐったような投資が納得いかず、詐欺に違いないと内定を進めている松本が目の上のたんこぶである。

実在の事件を元にしているのであろうが、現在であっても決して色あせない金融サスペンスなのだから、全く橋本忍はすごいと思います。

天野は戦後、無一文から会社を興し、法律の裏をかいて大勢から金を集めていた。やがて70億の資産をかき集め、今解散しても理事だけで一人頭1億あまりの金が残るほどになっていた。ほかの理事は解散を考えるも、天野は更なる投資を考えていた。そんな時、アメリカの株の暴落で、一気に危機へ陥った。政治家につかませ、投資金融法という法律を作って自らの保身を考えていたが、政治家のほうが一枚上手で、結局天野は見放される。さらに気になるのが、金で動かない松本という刑事。

次第に追いつめられながらもしぶとく対処する天野たち理事たちを演じる俳優が宮口清二、殿山泰司などの面々がものすごいのである。そして圧巻は宮口清二扮する理事が、松本を呼びだして500万の金で慶事をやめるように進める場面。自分の生活もあり、まるで拷問だという伊藤雄之助演じる松本の迫力と、宮口の長せりふの間、二人の丁々発止の場面は見事というほかない。

クライマックスは、取り付け騒ぎの中で理事たちが安穏としているところへ松本がやってきて天野を逮捕。取調室でも、「人は金をほしがるものだ」と平然と答える天野と松本はどちらが善でどちらが悪かわからないように対峙する刑事たちのシーン。

寺の境内で、文無しになった理事の一人が露天で古着を売っていて、「大儲けして1億あまり手にしたんだ」と豪語するも誰も相手にしない。しかし、観客は知っているのだから、画面に向かって「本当だぜ」と観客を見るショットでエンディング。まったく、これがサスペンスといわせる傑作でした。


「春を待つ人々」
こちらはお気楽な娯楽映画の典型的な一本。

選挙に出る父里美の応援に子供たちが集まってくる。そこで巻き起こるそれぞれ子供たちの表と裏、さらに恋愛、父のかつての妾のお話などなど、てんこ盛りにとりとめもなく次々とあちこちにエピソードが飛んでいく。

いったい、本来の話は何?といわんばかりの展開で、どこで終わっても、さらに続いても何の違和感のない作品で、飽きることはないものの、いったいどうなるのかと落ち着く先のない映画でした。

結局、選挙に落選した父の元を一人また一人と帰っていく。大阪にいるお妾さんのところに父が訪ねてきて、さらにさらに・・

でもこれもまた職人中村登監督作品であります