くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「偽りの人生」「バーニー/みんなが愛した殺人者」

偽りの人生

「偽りの人生」
可もなく不可もないふつうのサスペンス映画でした。というか、サスペンスよりも人間ドラマとしてふつうの作品でした。監督はアナ・ピーターバーグという人です。

真っ暗な画面に蜂の羽音、画面が開くと蜜の採取をしている男女。一人はペドロ、もう一人は恋人のロサである。
ペドロにはなにやら暗い面があり、その夜もルーベンがなにやら船で運んできた物をアドリアンと二人で確かめる。船の中には猿ぐつわをかまされた老人。目隠しをしていないと罵倒したアドリアンはその老人を撃ち殺す。そしてメインタイトル。場面は変わって、医師であるアグスティンの物語へ。

アグスティンは妻とうまくいっていないようで、二人に子供がないために養子をもらうことにしたらしいが、直前でアグスティンが拒否、怒ったクラウディアが責め立てるが、アグスティンは部屋に閉じこもる。どうもこの医者は精神的におかしい風であるし、妻の金に支配されていて鬱憤がたまっている感じが見える。

そこへ、双子の兄のペドロが訪ねてくる。ガンで余命わずかだから殺してくれと言う。実家である島で稼いだ金も隠してあるからやるというのだ。最初は躊躇するも、風呂で苦しむペドロを殺したアグスティンは彼と入れ替わることにして、ペドロが住んでいた島へと乗り込む。しかしペドロはなにやら悪事に手を染めていて程なくして逮捕される。

釈放されたものの、なにやら不穏な空気がある。島でペドロの恋人らしいロサと出会い純粋に心が引かれていく。

クラウディアとうまく行かないアグスティンが島でロサに出会い、彼女のために、彼女につきまとうアドリアンを殺し、足を洗って逃げようとするのが後半の、そして中心となる話だと思うが、どうもロサの存在感が弱いために、アグスティンが人生をやり直し、ロサのためにという切迫感見えない。そのために、ラストでアドリアンを殺したものの彼に撃たれ、ロサと旅立つ小舟の中で息を引き取り、かなたに流れていく船をとらえてエンディング。

うまく描けば、人間ドラマとして胸打つドラマになったかもしれないが、やや、ポイントをはずした脚本が全体の出来映えに影響した感じです。


「バーニー みんなが愛した殺人者」
ジャック・ブラックという俳優はあまり好きではないのですが、ゴールデングローブの男優賞ノミネートでもあるし、宣伝からもおもしろそうな物語なので見に行った。

冒頭からナレーションと関係者(といっても俳優さんですが)の証言の連続、それがラストシーンまで続くから、さすがに途中からしんどくなってしまいました。

大学の講義で死体の処理について熱く語るバーニーのシーンから映画が始まる。

物語の舞台はテキサス州カーセージという町。ここに、広告を見てやってきたバーニーは葬儀社の仕事に就く。しかし、形式的な仕事ではなく、常に遺族の心をつかんで活動する彼の仕事ぶりは町中の人々から歓迎されるのである。

この町の大金持ちで、家族からも子供たちからも町中からも嫌われているマージョリーの夫の葬儀にも参加し、丁寧な対処をしたバーニーはいつの間にかマージョリーと親しくなってくる。そして、お金の管理まで任されたバーニーは気前よく町のためにお金を使う。そんなバーニーにさらに町中の信頼が集まる。

ここまではいい。しかし、マージョリーのわがままがエスカレートしていく中、ある日、バーニーは彼女を銃で撃ち殺してしまうのである。

誰も気がつかないまま9ヶ月、ようやく不審に思った警察が乗り込むと、冷蔵庫に丁寧に隠してあるマージョリーの死体を発見、バーニーは逮捕。すぐに自供して裁判となるが、今度は町中がバーニーの味方になる。

何とも、アメリカという国は妙だなと思う。ふつうなら殺人を犯したということで、いくらいい人でも一転して人々から化け物のごとく見られる。ところがこの物語はそうではない。実に妙なのだ。実話だから受け入れることができるというもので、終盤にかけて、さらに証言のシーンが続く。

はたして、マージョリーは寂しかったのか?いまさらいい人になってお金も使えないからバーニーを介したのか、そんな複雑な感情など生む暇もないほどに証言また証言のシーンばかりで、結局、曖昧な部分を生み出さずに一気にラストシーン。有罪が確定するのである。まぁ、当たり前のことですね。

バーニーという人間は精神的な異常者である。そりゃあ、仕事ぶりは人並みはずれていたかもしれないが、そこに異常性がなかったとはいえない。結局、いとも簡単に撃ち殺して、冷蔵庫に隠して、ふつうの生活をしていたのだから普通の人間ではない。視点を間違えてはいけない。彼は異常犯罪者だったのだ。と私は思う。

ただ、映画の作り方は個人的には退屈だった。証言の繰り返しが平坦なテンポになってくるためである。もう少しシャーリー・マクレーンに演技もしてほしかった気もする。もちろん、わずかのシーンに迫力満点の存在感は見せるのですが、もっとストーリーでつなぐ部分、証言の部分、バーニーは何者?と考えさせる部分など取り混ぜてリズムを作ればおもしろくなった気がするのですが、どうでしょう。正気か異常かという微妙なバランスの存在感を見せるジャック・ブラックの演技は特筆ものでしたが、作品としては私は期待はずれでしたね。