くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「銀座二十四帖」

銀座二十四帖

夜の銀座のショット、軽いタッチの森重久弥の語り口から映画が始まる。

夜景をバックにタイトルバックから夜明け、新田銀座の景色と夜明け。田圃に群れる蛙のシーンから、朝方の肥たんごを担ぐお百姓さんのシーンを挟んでコミカルに物語が幕を開ける。まさに川島雄三ならではのユーモアに一気に引き込まれるファーストシーンが鮮やか。

物語はもちろん東京の大都会銀座。その町の夜の景色、昼の景色をが丁寧な演出でカメラに収められていく。物語の主人公は月丘夢路扮する京極和歌子。夫克己がヒロポンのみつばい組織を牛耳っているらしいとのことで離婚を考えている。父から譲られた絵のコレクションを売るべく物色していると、かつて奉天にいた少女時代に描いてもらった絵を見つける。そこにはG・Mのイニシャルが。淡い恋心を思い出し、このG・Mという人物を捜していくのがストーリーである。

ここ銀座に、まるで主のようにいきるコニーという花屋。本名は三室戸完。かわいらしい少女たちを従業員にして、夜の町で花を売りながら、夜の世界でも顔の存在である。

G・Mという人物、最初は胡散臭い画家が名乗り出るもこれはどうやら嘘である。次に野球のスカウトで、これまた胡散臭い三ツ星五郎という男も出てくるがこれも違うらしい。コニーの兄三室戸五郎ではないかと疑いはじめ、和歌子と花を仲介に知り合った二人が、絡み合う銀座の人間関係を描きながら、展開する。

大阪から和歌子の姪の雪乃が登場して、俄然テンポがよくなってくる。いつも和歌子の家のそばで絵を描いている望月三太郎、彼もまた和歌子に気があるらしいが、その真相は不明。

和歌子の落ち着いた、どこか影のある物語に、コニーが探すいき分かれた兄五郎の姿、G・Mという謎の人物の真相などが絡み、川島雄三らしい、個性あふれる人物が次々と登場するテンポの良さに、少々の荒っぽさも放ったらかして、見入ってしまう。

背後に流れる軽いタッチの音楽や森重久弥の語りのリズムも絶妙のテンポを映像に生み出して、いつの間にかクライマックスへと流れ込んでいく様は、川島雄三ファンにはたまらない。

結局、和歌子の夫がコニーの兄だと思っていたが、それは克己がコニーの兄の名をかたってヒロポンの密売をしていただけで、コニーの兄はすでに亡く、そこへ駆けつけた実は刑事だった望月等の前で克己は自殺するというラストへ。

一人去っていく和歌子に駅で別れを告げるコニー。カメラはそんな物語を語った銀座を俯瞰でとらえてエンディング。まだまだあどけない少女だった浅丘ルリ子がルリちゃんといわれて頻繁に登場する。これも見所。

とってもモダンなリズムと映像に、楽しいひとときを送ることができる一品で、さすがに川島雄三の映像センスに参ってしまう。決して彼の作品群の中では傑作ではないけれども、必見の一本でした。