くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ハートの問題」「スター・トレック イントゥ・ダークネス

ハートの問題

「ハートの問題」
あまり期待もしていなかったが、イタリア映画祭で話題になった作品なのででかけたが、なんと、予想以上にとってもいい映画だった。

禿頭だが、とっても気がよくておしゃべりな脚本家アルベルトが、恋人のカルラとのベッドで目を覚ますところから映画が始まる。窓辺にたつと、カモメが鳴いていて、なにやら銃声がする。あまり気を止めず、胸の不快感から自らバイクで病院へ。

画面が変わると、妻ロッサーナと寝ていたアンジェロという青年が目を覚ます。台所で水を飲んでいるところへ妻がやってくる。「ボルトを飲み込んだようだ」とふざけるアンジェロだが、突然苦しむ。そのまま救急車で病院へ。

アルベルトは病院へ着いて、自分は心筋梗塞だというが、かるくしゃべる彼の姿をだれも信じない。目の前を救急車で来たアンジェロが通り過ぎ、自分は一人で冠動脈診療科の窓口へ行く。そこで、心筋梗塞だからと緊急手術となる。

集中治療室で二人は目覚める。アンジェロに、おしゃべりなアルベルトが話しかけ、やがて二人はベッドの上で仲良しに。この映画の導入部が実に軽快で、このあと二人の面会にやってくるアンジェロの妻と子供たち、アルベルトにやってくる演劇関係の人々という人物紹介が実にうまい。

やがて退院した二人は仲良くウォーキングしたりするが、一ヶ月後の検査ではアルベルトは85の数字(たぶん回復の度合いだろう)だが、アンジェロは20そこそこという結果になる。自分の命の終わりを覚悟したアンジェロは、アルベルトに70くらいだとうそを言い、恋人カルラが去ってひとりぼっちになったアルベルトを自分の家に招いて一緒に住む。彼に自分の家族を託すためである。

本来なら、じめっとしたお涙ちょうだい映像になるところが、アルベルトの底抜けのおしゃべりのテンポが実にいいし、脚本家であるという設定からでてくる人物描写のせりふや、色をもので表現したりするせりふの数々がうまい。

ちょっとぎくしゃくしていたアンジェロの娘ベルラや息子アイアトンとも次第に打ち解けていく。アンジェロは妻をアルベルトに託そうとしているのだが、アルベルトは大人の常識で冷静につきあうところが実に好感である。

アンジェロはアルベルトを含め、家族と湖のそばの別荘で過ごす。
しかし、どこかおかしいと感じたアルベルトはアンジェロに詰め寄ると、すでに余命わずかだといわれる。そして、物語は一気に終盤へ。

様態の急変したアンジェロが入院。一方、アンジェロたちとの思い出を脚本にしていくことで、息詰まっていた仕事も前に進むアルベルト。楽しかった思い出がフラッシュバックでアルベルトの心によみがえるあたりの交錯して挿入されるカットが見事。

そして、アルベルトに電話が。病院に駆けつけると、もはやアンジェロは虫の息で、最後にアルベルトと握手する。
アンジェロはアルベルトに自分の金など残したが、アルベルトは自分のことは自分で前に進むと決意し、再度恋人のカルラの元へいく。

夜、アルベルトが目をさますと、外に銃声。アンジェロの子供がやってきたので、めがねをかけさせ、今なにが起こってる?と訪ねる「警官が銃でカモメを撃ってる」

こうして、脚本家になりたいと言っていた少年の夢の実現へアルベルトはアドバイスする。アンジェロへの心ばかりの恩返しなのだろうか。暗転してエンドタイトル。

別荘で、アルベルトはアンジェロの娘と、浜辺でたばこのやりとりで打ち解け、息子とも、色眼鏡をかけて、いろんな人々の観察をさせて、脚本家になりたいという彼の規模をさりげなく教え、さらに、下着をプレゼントされたアンジェロの妻ロッサーナが詰め寄ってきたときも、ただ、友人として送っただけだと語るアルベルトのシーンが実に心地よい。それを影から見ているアンジェロのショットもまた切ないのです。

細かいエピソードの数々が、いずれも主になる物語からぶれずに、しっかりと枝葉になって中心のお話を深みのあるものにしていく脚本のうまさ。そして、じめっとした演技をしないアルベルトの存在感、アンジェロの素直さもとってもいいのです。

久しぶりに、小品ながらとっても良い秀作に出会いました。


スター・トレック イントゥ・ダークネス」
おもしろい。まったくJ・J・エイブラムスという監督はカメラワークでストーリーを語っていくのが実にうまい。というか、カメラワークのリズムだけでどんどん物語を牽引していく。悪く言うとめまぐるしい。前作もそうだったが、始まったとたんに右に左に回る、あがる、回転する。どんどんカメラが縦横無尽に動きながら、その合間にせりふやシーンの説明が入り、豪快なCG映像によるスペクタクルなシーンが展開する。そして、あっと言う間にクライマックスなのだ。だから、息つく暇もなく楽しめる。

ただ、悪く言うと、ストーリーテリングの弱さである。奥の深いドラマにつっこんでいく演出をあえて拒んだ作り方をするために、後から物語だけ考えると、非常に薄っぺらく、テレビシリーズの頃にあった、ドラマとしてのスタートレックになっていないのは前作と同じである。しかしおもしろい。

映画シリーズの第一シーズンはさすがにテレビシリーズの重圧からか、中途半端な大作のシリーズが続いた。しかし、ようやく、テクニカルが発達し、今の映像世界の中での現代のスター・トレックのシリーズとして開花した感じがします。

とある惑星で、カーク船長たちが走って原住民から逃げているシーンから映画が始まる。白塗りの原住民が彼らを追い、どうやら火山の爆発を止めるための装置をスポックが設置しにいく流れらしい。海の中にエンタープライズ号を隠してあるというかなり無理のある設定からであるが、科学的な理論はこのシリーズ、特に新シリーズには不要かもしれない。

そして、原住民にエンタープライズ号を見られてしまい、その規則違反のためにカーク船長は降格、スポックも転属。新たにエンタープライズ号の船長にはカークの恩師のパイク提督が就任する。

画面は変わって、ロンドンの小児病院で一人の少女が不治の病から助けられる。助けたのはジョン・ハリソンという人間で、今回の悪役。

こうして始まる物語は、とにかくめまぐるしく展開していく。パイク提督はハリソンの襲撃で死亡。再びカークがエンタープライズ号に乗り、クリンゴンの中立地帯に逃げたハリソンを捕まえにいくが、その際に妙な魚雷72機を積み込まれる。これが、ハリソンの部下が冷凍になっているカプセルで、ハリソンは300歳。本名はカーンという。カーン?どこかで聞いた名と思っていたら、映画の第一シーズンででてきた悪人であるが、ほとんど覚えていない。

魚雷の中にはカーンの部下たちが冷凍されていて、それをクリンゴンの中立惑星に打ち込みクリンゴンと地球の戦争を起こそうと画策していたのがマーカス提督で、彼が今回の黒幕だということをカーンから聞かされる。

一度はエンタープライズを追ってきたマーカス提督の巨大軍艦と対決するが、実は本当の悪人はカーンで、そのドン炎返しから、カーンをスポックが地球上で取っ組み合いの末に捕まえるアクションシーンも登場。

エンタープライズ号があわやという時、カークが燃料の中心部に入って機関を直し、無事危機を脱出。一時は死んでしまうが、カーンの超人的な血液で息を吹き返し、カーンらは再び冷凍され、ハッピーエンド。二転三転する物語はかなり強引である。しかしあれよあれよと前に進んで行くので、まぁいいかと流していかざるを得ないのである。

そして、エンタープライズは5年の探査旅行に出発してエンディングである。え?終わった。という感じ。

もう見せ場の連続と、スペクタクルなCGシーンが前作同様圧巻で、カメラワーキングが実にうまいために、技術のみでなく、ものすごい迫力と、見せ場となってスクリーンを多い尽くします。

全くおもしろい。ただその一言につきる娯楽大作でした。