くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「陸軍登戸研究所」「悪いやつら」

陸軍登戸研究所

「陸軍登戸研究所
本来、ドキュメンタリーはみないのですが、ちょっとおもしろそうだったので見に行った。

知る人ぞ知る、陸軍登戸研究所とは、戦時中、日本軍が秘密兵器を研究開発していたところである。それも荒唐無稽で、有名なところではアメリカまで偏西風に乗せて爆弾を運ぶ風船爆弾の研究開発、さらに殺陣光線の研究、偽札の製造、スパイ用の秘密道具の開発、などなど、SFドラマの世界なのである。

しかし、日本の最高レベルの知識人を結集したこの研究所は、実際、風船爆弾を開発し約9000個とばして、うち1000個はアメリカ本土にたどり着いているのだから、何とも日本人の知略には驚くし、日中戦争さなかに、大量の海外の偽札で軍需物資を調達し、経済混乱を起こしてのだから、影の軍隊的な威力もあったのだろう。有名な陸軍中野学校の偽パスポートなども作っていたわけである。

そんな、戦時中の日本軍の隠れた部分を、まだ生きている当時の関係者へのインタビューを中心に、約3時間語っていくのがこの作品である。

もちろん、当時の極秘資料となる記録フィルムなどは存在しないし、証拠書類自体がほとんど廃棄されている中では、作品のほとんどの部分が、かなりな高齢者の語るインタビューのみとなる。

唯一残っている殺陣光線の短編アニメなどで導入部を引きつけるものの、その後延々と続くインタビューシーンはさすがにしんどい。しかし、当時を生きて、研究に携わってきた人々の生の声は、かなりの貴重な映像であり、興味津々と後半は見ることができました。しかも、トップレベルの技術者だった彼らは、終戦後もそれなりに成功していて、映像を見ていても、かなりの知識人であるのもまた興味を引かれますね。

これもまた戦争映画と呼べるのでしょうね。


「悪いやつら」
話題の韓国映画という事で見に行ったのだが、ふつうの映画だった。ただ、冒頭の稚拙な部分はこの作品ではかなり少なくて、ふつうにドラマが進行していくのは、ある意味、おもしろかったといえる。

テンポのある暗い音楽でタイトルが流れた後、ヤクザが検挙されるシーンで映画が始まる。そして、その出来事から一週間前に戻ってストーリーは本編へ流れていくのだが、別に戻らなくてもよかったんじゃないという出だしである。

賄賂の疑いで首になってしまった税関職員のチェ・イクチュンが、その地縁血縁と、日和見的な世渡り術で、あっちにつき、こっちにつきながら、裏社会を渡り歩き、自分はヤクザになるわけでもなく、といって普通の人間として生きるでもなく、のし上がっていく。明らかに
最低の男が主人公である。

しかし、まぁ韓国というところの血縁関係のしがらみのものすごいことといったら、それがこの作品のストーリーの根幹になっているのだからすごいものである。

最初はかなり遠い親戚で、ヤクザの親分をしているヒョンベと結託し、その道でどんどんのし上がり、持ち前の人間関係のコネを頼りに出世していくが、やがてノ・テウ大統領の「犯罪との戦争」宣言の中で、互いに確執が生まれ、今度はヒョンベのライバルのキムと組んでみたり、執拗に食い下がってくる検事にどうしようもなくなって、最後はヒョンベも罠にかけて刑務所に送り、自分は一人生き残る道を選ぶ。

そして、月日が流れ、子供たちも、孫も一人立ちして祝いの席に、刑務所をでてきたヒョンベが話しかける声がかぶってエンディング。

特に際だった演出も無いふつうの映画で、二時間半ほどあるので、たいがい、同じパターンであっちにふらふらこっちにふらふらするイクチュンの小悪党ぶりが描かれていくストーリーは、ある意味芸がないといえなくもないが、最後までこんな最低の小悪党の世渡りに飽きもせずに見ている自分がいた。その意味でよくできた娯楽映画だったのかもしれません