くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「あの頃、君を追いかけた」「ポルトガル、ここに誕生す ギ

あの頃、君を追いかけた

「あの頃、君を追いかけた」
原作のギデンズ・コーが自ら監督を務めた大ヒット台湾映画の話題作。

とってもストレートな作品でした。確かに、国柄が違うので、所々にずれるところは幼稚に見えなくもないけれども、それは作品の出来映えとは別の話だと考えれば、とってもきれいな青春ラブストーリーです。

荒削りに走る脚本と、荒っぽいキャラクター描写、雑なCG映像処理などはかなりな低レベルの作品に見えるのですが、ラストシーンの処理がうまいために見終わった後、損をした気分にならない。その点で、一見の価値のある映画だったかもしれません。

リンゴのアップから映画が始まりタイトル。どうやら、主人公たちが結婚式に招待されているのか、これから主人公コートンの結婚式なのかをにおわせる2005年のシーン。

そして、時は1994年に戻る。登場人物の個性豊かな紹介が次々と行われる。といっても、高校生時代、考えることはSEXばかりで、やたら、”抜く”やら”立つ”やらの言葉がでてくるし、実際、極端に股間が膨らんでいる画面や、それをふざける主人公たちのショットが見られる。自宅では真っ裸で平然と夕食を食べるシーンなど、本当に台湾てこんなもんなのかとさえ思える。

ここから、ひたすら主人公コートンとその悪友たち、そして彼らのマドンナ的なチアイーとのよくある、あまりにもたわいのない高校生活が描かれていく。映像に特筆するようなテクニックはなく、真正面から素直にカメラを回していく様は、ある意味とってもきまじめな演出と呼べるかもしれない。

教室のシーンは、スローモーションや、ダンスシーン、あまりにも安っぽいCGシーンなども登場し、素人監督の安易なお遊び演出にさすがにうんざりしかけるのであるが、それも慣れてくると、個性として許せるようになる。

こうして、国は違うとはいえ、日本の高校生もどこか見覚えのあるシーンが繰り返される。

やがて、コートンとチアイーは何気なく惹かれあっているように見えてくる。淡い、切ないラブストーリーのにおいが漂う中、物語は彼らの卒業、そして大学生活、社会人へとどんどん時は流れていく。

コートンとチアイーのデートシーン、公衆電話を使った遠距離恋愛のようなシーン、そして、先にどんどん大人になっていく女の子としてのチアイーと、いつまでも子供なコートンとの考え方のズレによる喧嘩、別れ、そしておきまりの雨のシーンなどが描かれていくのだ。

地震、携帯電話、そして学生生活から社会人へ。その中で、何気なくコートンとチアイーは言い出せない最後の一言のために、恋人になれず、それぞれがそれぞれの人生を歩み始めている。二年ぶりにコートンがチアイーに電話をしたのは台北の大地震の時。チアイーの傍らには恋人らしい男性の影、それでもコートンからの電話に喜びを隠せにチアイーの笑顔が最高。

そして、時は流れ2005年。チアイーの結婚式に呼ばれたコートン等かつての悪友たち。披露宴の式場で、記念写真の後、友人の一人がチアイーの新郎に、新婦とキスさせて欲しいと頼む。なら、まず私にどういう風にしたいか実演して見せてから、とふざける新郎に飛びついたのがコートン。ディープなキスをして、思いの丈をぶつけるコートンの姿をバックに、鮮やかに青春時代がフラッシュバックされる。あざといシーンであるがここが実にいい。このシーンで一気に涙があふれ、画面はコートンとチアイーの架空のキスシーンへ。

そして、現実に戻り、ほほえむチアイーの姿、そしてエンディング。

人生ってこんなものかもしれない。誰もが、後一言勇気を持って言い出せば、その結果は大きく変わっていたかもしれないのに、青春まっただ中ではそれができない。それはいつの時代も繰り返される青春の後悔なのだが、だからこそ、若者は大人に成長できるのかもしれませんね。

確かに、映画のレベルは普通かもしれないけれど、とってもいい映画だった気がするんですよ。


ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区」
アキ・カウリスマキペドロ・コスタ、ビクトリ・エリセ、マノエル・ド・オリヴェイラの四人の監督が、ポルトガル発祥の地を題材にそれぞれ個性的な映像で描く、フィクションともドキュメントともいえないオムニバス映画です。

全くせりふのない「バーテンダー」という映画で幕を開ける。監督はアキ・カウリスマキ。ちょっとウィットと、さりげない笑いやアイロニーが伺える映像は、やはりアキ・カウリスマキの色ですね。

それに続くのが、ちょっとシュールな「スウィート・エクソシスト」という作品のペドロ・コスタ。兵士と亡霊の対話劇という不可思議な映像で、本題をはずれたいが、あくまで主題はポルトガル発祥の物語へと引き戻される映像が実に個性的。

さらに、ビクトル・エリセ監督の「割れたガラス」が続くが、これがまた長い。
閉鎖されたガラス工場の従業員たちの声を、一人一人オーデションのごとく、巨大な工場の食堂の写真をバックに椅子に座って語っていく。最後にアコーデオンを演奏して次のシーンへ。

最後はマノエル・ド・オリヴェイラ監督の「征服者、征服さる」が実に最後を飾る超短編
ツアー客にポルトガル発祥の広場を案内するツアコンの姿をとらえていく。ギマランイスの起源であるアルフォンソ一世のエピソードと像を紹介。客たちがカメラを向けて銘々写真を撮る。「征服者が、観光客のカメラに征服された」というせりふで締めくくりエンディング。

わかりやすい物語が展開するわけではないので、正直、しんどい映画です。でも、それぞれ、ヨーロッパの巨匠が描く映像は個性豊かで、それを楽しめば十分な一本だったと思います。