くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ロスト・イン・北京」

ロスト・イン・北京

昨日みた「ブッダ・マウンテン」が、思いの外よかったので、その前作であるこの作品を見に行った。
なるほど、こちらもそこそこのレベルの作品であるし、リー・ユー監督の才能が伺える佳作でした。

手持ちカメラを多用した映像と、細かい編集を繰り返すカットつなぎは、彼女の作風である。そして、この作品でも彼女のそんな演出が、物語に色合いをプラスしていく。

主人公のピングォはマッサージ師である。彼女がマッサージをするシーンから映画が幕を開ける。手際よい姿に彼女の熟練度を見せる。実は彼女は店の社長に内緒だが結婚している。夫のアン・クンは高層ビルの清掃をしている。中国北京ではこれが、並の夫婦の姿なのだろう。

マッサージ店の社長リン・トンもまじめな経営者だが、子供がいない。しかし、ひたすら店の仕事をこなしている。この生活も普通の姿なのだろう。

ところが、ハプニングが起こる。友達の相談に乗って、勢いで酒を飲んでいたピングォは酔っぱらったまま、店に行き、酔いつぶれてたまたま社長がいた部屋で寝込む。ところが、霰もない姿で寝ているピングォをみて欲情したリン・トンは思わず彼女をレイプしてしまう。しかも、その様子をたまたま窓を拭いていた夫アン・クンが目撃する。

こうして映画は動き始める。

やがて妊娠したピングォ。リン・トンは密かに子供を欲していたので、もし自分子供なら引き取りたいといい、その条件に10万元アン・クンに与えるという。

産まれた子の血液型はA型、つまりアン・クンの子供だったが、金のために、B型と書き直してもらい、まんまと金を受け取る。有頂天になるリン・トン。しかし、それぞれの思惑が、真実をゆがめたことで崩れ始める。うそをついたものの、子供がかわいいアン・クン。長年ほしかった子供を手にして溺愛するリン・トン。リン・トンの妻とピングォとの確執、夫への不審、ぎくしゃくとし始める中で、アン・クンは真相を話す。それはそれぞれの人々をさらなる矛盾に突き落とす。

結局、誰も彼もがバラバラになってしまって、エンディング。ピングォは子供を連れて、出ていくし、リン・トンも妻が出ていって一人になる。アン・クンも去ってしまう。

個人的には、どうも納得できない映画でしたが、ここに中国の一人っ子政策まで持ち出してくると、さらなる深いメッセージが見えてくるような気がしますが、これは考えすぎでしょうかね。「ブッダ・マウンテン」の方が、私はよかった。