くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ミッドナイト・ガイズ」「四十九日のレシピ」

ミッドナイトガイズ

「ミッドナイト・ガイズ」
見た人の評判がとってもいいので、期待して見に行きましたが、なるほど、とっても素敵なナイスな秀作でした。
監督はフィッシャー・スティーブンスという人です。

朝焼けの美しい景色と町並みが画面いっぱいに広がり、カメラが引くと、それは主人公、クリストファー・ウォーケン扮するドクが描いている絵であることがわかる。ちょっとしゃれたファーストシーンで始まるこの作品、カメラがとっても美しくて、ぼんやり光るランプや町明かりに浮かぶ景色を徹底的に採用し、横長の画面を効果的に利用した人物配置など、かなりスタイリッシュなのです。

ドクの姿を映す一方で、アル・パチーノ扮するヴァルが刑務所からでてくる姿を挿入していく。暗闇の陰影と所々に差し込む光のバランスが実に美しい。

でてきたヴァルを待っていたのが、友人のドク。ヴァルは28年間の服役を終えてでてきたのだ。この時間の長さもなかなかのものであるが、実はドクは組織のボスの命令でヴァルを殺さないといけない。

若き日、ドクとヴァルは何かの犯罪で突入したが、ボスの息子を誤ってヴァルが殺してしまい、恨んだボスのクラップバンドから依頼されていて、その期限が翌日の10時だという。

それを聞いたヴァルはそれまでの時間、28年間の刑務所暮らしを精算するように我慢してきたことを一緒にこなし始める。なじみのアレックスという女性がウェイトレスをする店でステーキを食い、当たり前のように、ドラッグストアで薬を盗み、売春宿で女性を抱く。スポーツカーを盗んで、かつての仲間のハーシュを施設から助け出したりする。その車に女が拉致されていて、その犯人をこてんぱんにしたりもする。

売春宿では、薬で男性を取り戻したヴァルが、薬の飲み過ぎで、病院にかつぎ込まれたり、そこで出会った女医はかつての仲間ハーシュの娘だったりと、時の流れをさりげなく織り込みながら、かつての仲間同士の暖かい友情を写すあたりもとってもいいのです。

やがて、二人の女性とことをすませたハーシュは、車の中で事切れてしまう。墓地に埋葬したヴァルとドク。こく一刻と迫る期限の10時。アレックスの店で朝食を済ませ、アレックスに置き手紙を残すドク。実はアレックスはドクの孫だった。

スーツを新調したころには、時は目の前に迫っている。クラップバンドの部下のチンピラがからんできたら、あっという間にやっつける爽快感。そして、二人はクラップバンドのアジトへ向かい、拳銃をぶっ放す。カメラはゆっくりとティルトアップして、ビルの上空へ、そこにはドクが描いていた朝焼けが広がっている。そして「THE END」の文字。

いまどき、こんなしゃれた映画があるものかと思えるほどに、洗練された映像センスと音楽にどんどん引き込まれる一本で、バーでヴァルが若い女の子とダンスをするときの口説き方が、実にオーソドックスでロマンティックだし、ハーシュに最後の希望を叶えさせてあげるところも、胸が熱くなる。盗んだ車のトランクに拉致されていた女性の恨みを晴らすために、犯人たちをやっつけるドクとヴァルの男臭い正義感も最高。

ヴァルとドクは、あの撃ち合いで死んだのかどうかはあかされず、置き手紙でアパートに行ったアレックスは、朝焼けの絵とお金を見つける。最後の電話で、ドクからお金とアパートの家賃は一年分払い込んだというメッセージを聞いて「おじいちゃんありがとう」と答えるアレックスが素敵。

全編がとってもおしゃれで、ロマンティックな名編で、とっても人間味あふれる映画でした。よかった。


四十九日のレシピ
二階堂ふみ永作博美がでているというだけで見に行った映画ですからそれでいいのですが、何とも長く感じる映画でした。監督はタナダユキです。

永作博美扮する百合子の家庭、夫が浮気をしているらしく、殺伐とした画面から映画が始まる。一方、百合子の実家では妻乙美が亡くなったばかりで、無気力にごろんと横になり、なにをするでもない夫良平。そこへ、突然ゴスロリの服装の派手な女の子イモがやってくる。乙美に頼まれて、四十九日までの家事をするように雇われたのだという。

さすがに二階堂ふみのキャラクターが一気に立つ。石橋連司扮する良平の存在感が、非常に薄いし、この直後に登場する日系三世のブラジル人ハルの存在も何でなの?というほどにどうでもいいところがどうもこの作品、だるいのである。

そんなところへ帰ってくる百合子。継母の乙美が残したレシピを元に、彼女の遺言である、四十九日は大宴会をしてほしいという言葉に向かっていく展開なのだが、口うるさく苦言をいう良平の姉の存在も、今一つストーリーのスパイスになっていないのが気になって仕方ない。

結局、だらだらという物語の展開で、ハルが去り、いよいよ当日、次々と乙美の友達という人々が集まってくるのがクライマックスなのだが、なんとも迫力がない。ただ、二階堂ふみだけが浮いているのである。

結局、四十九日もめでたく終わり、百合子の夫も、浮気相手と別れて、もう一度やり直したいと戻ってきて、百合子が東京へ戻る車の中でエンディング。

テレビドラマにもなったらしいが、どうも、まとまりがない。タナダユキ監督作品は、前作の「ふがいない僕は空を見た」はなかなかの作品だったように思えるが、今回は脚本が悪いのか、今一つ、映画の中に乗り切れないのである。

不幸な女を演じると天下一品の永作博美と、すっ飛んだ女を演じるとこれまた絶品の二階堂ふみだけが、浮き上がって演技をしている感じだった。