くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ザ・コール [緊急通報指令室]」「東京の恋人」「魔子恐る

ザ・コール

「ザ・コール緊急通報指令室」
単純におもしろい、はらはらドキドキが全編にみなぎったサスペンス映画の佳作でした。

夜の町、俯瞰でとらえるビル群、背後に911の緊急コールの声が響き、カメラは警察の緊急指令室へ。そこで的確に通報を処理していく主人公ジョーダンにカメラが集まって映画が始まる。

そこへ一人の女性レイアからの緊急コール。家宅侵入してきた男にねらわれている。たまたまきれた電話をジョーダンがリダイヤルした為に、犯人に見つかり彼女は殺される。そして6ヶ月後。

トラウマで、現場を離れたジョーダンが、教官として新人研修の案内をしているところに、新人担当者に911、パニックになる担当者に変わり座るジョーダン。一人の少女ケイシーが車に拉致されたという。

物語は、三部構成になり、まず、最初の事件でトラウマになったジョーダン。次に逃走する車の中でのケイシーとのやりとりによる追跡シーン。そして、追跡を逃れ、自分のアジトでケイシーを拉致した異常者である犯人が、ジョーダンに追いつめられていく展開の後半部となる。

車からペンキを流したり、手を振ったりするケイシー。緊迫するシーンが続くが、途中で、疑われた男を殺したり、ガソリンスタンドの男を燃やしたりはちょっと、ふつうの映画になりすぎて惜しいような気もするが、緊張感は途切れない。

やがて、ジョーダンが犯人の隠れている地下室を見つけて、ケイシーを助けるが、911はコールせずに、犯人を部屋に閉じこめて去っていくラストは、特に驚愕するほどでもない。これもありかなと思えばありのラストシーンである。

ケイシーがポケットに入れていたプリペイド携帯は、友人の彼氏のものだが、このエピソードは無視している。さらに、車の指紋を拭いて逃げるほどの犯人なのに、ケイシーの携帯に気がつかない。犯人は、姉との間に近親相姦的なものがあり、頭の皮をはぎ取るというサイコキラーなのだが、ここまで描く必要があるだろうか?そう考えると、いろいろ穴だらけの脚本だが、おもしろいのだから仕方ない。

以前「セルラー」というサスペンス映画の傑作があったが、さすがに構成の違いは歴然で、今回の作品は、ある意味ふつうである。しかし、クローズアップや細かいカットを有効に利用した画面づくりは、とにかく、全く緊張感の途切れない、見事な展開を見せるし、ラストまで、一気に走りきるおもしろさがある。

サスペンスとしてのおもしろさを堪能できる娯楽映画の一本という感じで、ふつうのB級レベルの映画でした。

「東京の恋人」
たわいのない人情話なのですが、実によくかかれた脚本に感心する一本。決して名作とか傑作ではないのだけれど、細かいせりふやエピソードがそのどれも殺さずに、ちゃんと生かしてくる仕上がりがなかなかのものである。

物語は偽物の宝石などを作る黒川と、街頭で絵を描いている原節子扮するユキ、さらに靴磨きの三人、欲に眼がくらんでいるパチンコ玉の会社の社長赤澤と妻、宝石点の主人、等々が織りなす、どたばた劇である。

こんなエピソード必要なの?というのがあちこちにでてきて、何でもありなのだが、妙にほのぼのと暖かくなる。隅田川の跳ね上がる橋のシーンを何度も挿入してストーリーを運んでいく展開も実に絶妙。

気楽にみれる娯楽映画の典型で、当時の映画市場の余裕を感じさせる一本でとっても楽しかった。

「魔子恐るべし」
珍品、怪作という評判の作品を見てきたが、全く、同感、納得の一本でした。

映画は、深夜列車、そこに一人の信州弁の女魔子が乗っている。足はミニスカートレベルの着物で、早速人買いらしい男が近づいてくるが、森重久弥扮する山村が、魔子を横取りして降りる。

物語は、この魔子が福田という名前の絵描きを捜しに東京へ出てきて、そこで、様々な男たちにねらわれていくという、妙な展開のお話で、プロレスのリングに上ったり、ストリッパーをしたり、本人はだまされているのもわからず、妙な信州弁で乗り切っていく。

しかも、滅法強いし、ボディガードのようなおっさん茂助もついている。いったい彼女は何者?と思っていると、結局、福田は見つからず暗闇の中に消えて「魔子は何処に」というテロップがでてエンディング。狐に摘まれたようなラストシーンにあっけにとらわれる。

いったい彼女は何者だったのか、不明のままの映画だった。でも、画面はふつうなのだから何とも奇妙な一本でした。