テオ・アンゲロプロス監督の真骨頂とも言うべき、圧倒的な映像感性で描く、映像叙事詩の傑作。これはもう、才能のなせる技以外の何者でもない。ワンランク上の、すばらしい芸術作品でした。
では、どんな話か?と、聞かれると、その細かい部分はほとんどわからない。おそらくギリシャの歴史を描いているのだろうが、過去と現代、空間を飛び越える映像展開に、次第に、物語や主人公は誰かというようなことを追いかける意味がないことに気がつく。確かに、ストーリーがよくわからないために、目が覚めたかと思うと眠くなることは確かだが、それでも迫ってくる美しい色彩と、計算され尽くされた構図の見事さに、何度も目を覚ますのである。
さらに、人物の配置や動きを徹底した演出で、ものすごい長回しの映像の中に描いていくから、もう圧倒なのである。
映画始まると、雪原を数人の狩人が歩いている。彼方に一つの死体を発見し、それをパーティ会場に運ぶ。時は1977年の新年おめでとうの看板。このままではいけないと、舞台の奥に隠すが、そこから物語は過去に遡り、ギリシャの歴史であるか、様々な出来事が、描かれていく。そのそれぞれが、シュールではあるが、様々な手法と表現方法で映像として映し出されていくのである。
クライマックスは、再度パーティ会場に戻り、延々としたダンスシーン、そして、突然乱入する兵隊、人々が射殺されるが、、また生き返り、パーティーシーンと、これが映像表現だと言わんばかりの迫力である。
そして、再び、狩人が死体を雪原に戻し、雪で埋めてしまって、何事もなかったように彼方に去っていく。
見終わって唖然とするラストシーンだが、それまでの映像詩を思い返すに、その才能のすごさに言葉がでない自分を知る。
この作品は、何度も見直し、自らもほしい一本である。