くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ザ・イースト」「メイジーの瞳」

ザ・イースト

「ザ・イースト」
環境破壊、薬害などを行う企業に対する、保護団体からのテロ行為に近い攻撃から、企業を守るために設立された会社に就職した主人公サラが、そのクライアントを守るために、”ザ・イースト”と呼ばれる団体に潜入するという社会派サスペンス。

緊迫感あふれるストーリー展開と、真に迫っていく映像が、シリアスなドラマを娯楽性に富んだ物語に変換し、非常におもしろい一品に仕上がっていました。

監督はザル・マトマングリという人です。

物語は主人公サラが、テロ集団から企業を守る会社に就職するところから始まる。前知識なければ、普通の就職面接にみられるが、実は、命がけで、テロ集団に潜入するのだからスパイまがいの会社である。

近づいた集団から、謎の”ザ・イースト”だと判断し、組織に潜入に成功、三つの計画が一つ、また一つと遂行されるなかで、サラは、組織のリーダーベンジーに心引かれ、襲撃手段に一抹の疑問を持つ一方で、自分を雇っている会社にも疑問を持ち始める。

複雑な心理変化を描写していくので、かなり練られた脚本になっており、最後のターゲットが、サラの会社であり、すでに”ザ・イースト”はサラが、この会社の調査官であることを知っていたというクライマックスとなる。

さらに、調査官のリストを盗むよう働きかけるベンジー。そして、何とかリストを盗むものの、ベンジー等の活動にも疑問のあるサラは、結局、それを渡さず、ベンジーとも別れる。

社会ドラマの秀作としてみれば、なかなかの佳作である。サスペンスタッチも絶妙だし、サラが、格闘技などの技量にも秀でているという描写など、細かいところまでこだわった演出もなされている。

後は、こんな内容を好むかどうかということですが、素直に娯楽映画として楽しめば、十分見る値打ちのある一本でした。私は、大満足でした。

大好きなエレン・ペイジが、ちょっと、変質的なメンバーとなって、二つ目のターゲットである、自分の父親の会社に迫るあたりは、ちょっと、重すぎるかなと思いますが、ここをさらりと抜けると、ラストのエピローグは絶品です。

難点は、サラの夫とのエピソードを軽く流している。この程度なら、いっそ、カットしていてもよかった気がする。


「メイジーの瞳」
とっても素敵な映画、といいたいところですけど、描いているのは、大人のエゴ。でも、そのエゴを、幼い愛くるしい少女メイジーの目を通して語っていく映像が、とにかく切ないほどにやさしい。

美術商の父ビールと、ロック歌手の母スザンナの間に生まれたメイジー。両親はそれぞれ、仕事も順調だが、二人にすでに深い溝があり、離婚することになっている。しかし、お互いに愛する娘メイジーと離れたくないから、親権争いに。しかし、いざ、自分のところにくるとビールは、ベビーシッターで愛人のマーゴにまかせきり、スザンナも恋人のリンカーンに任せきりという始末。

こう書くと、なんと自分勝手な両親で、子供のことなんかどうでもいいように見えるが、物語の中では、なにかにつけて、娘メイジーと接しようとする。このいたいけなほどの両親の愛情は、メイジーもわかっているが、一方で、マーゴとリンカーンになついていく。

いったい、メイジーにはどう見えているのだろう。「ふりをしているの?」というせりふが入っているところを見ると、両親は、明らかに、ふりをしている。もしかしたら、自分に対しても。その、一瞬のせりふがとにかく切ない。

やがて、マーゴとリンカーンは親しくなり、そんな二人にかわいがられるメイジー。マーゴの知人の海のそばの家に住むが、そこへ、スザンナが迎えにくる。しかし、メイジーは、翌日マーゴたちとボートに乗るからと断る。

翌日、ボートの桟橋で無邪気に走るメイジーのショットでエンディング。果たして、これからどうなるのか?離婚した両親に翻弄されるメイジーの、ほんのひとときの時間を区切りとったようなストーリーと、優しい映像がとっても美しく、メイジーを演じたオナダ・アプリールのつぶらな瞳がとにかく愛くるしい、とっても素敵な映画でした。、