ばかばかしくて、やってられない二時間あまり。そんな何でもありの、思いつき映画は、さすがクドカンの脚本と三池の演出だけのことはある。なにがなにやら、どうでもよい展開と、リアリティなんてぶっ飛んでしまうエピソードの数々にあっけにとられる。単純そのものにおもしろい。
ではあるのですが、いつもの三池崇史監督ほど吹っ切れた緩急がない。原作自体が、それなりにぶっ飛んでいるせいか、宮藤官九郎の脚本がはじけきっていないためかはわからないが、どこかうまくかみ合っていない気がする。
バカ騒ぎすべきところで、バカ騒ぎし、締めるところでしめる。見せるところで見せる。クドカン脚本がうまく行ったときは、その絶妙の緩急が光るのだが、いかんせん、締まりなく飛び回っているのである。
物語は、主人公菊川玲二が車のボンネットにしばられて、叫んでいるシーンに始まり、ここまでのいきさつで、玲二は暴力団組織数寄矢会に潜入する捜査官に任命された下りが語られる。しかし、ここから、何度もギャグで繰り返す、捜査官としてのテストの下りがかなりしつこい。この辺が、間延びにしか見えない。もう少しスピーディに本編へ引き込んだ方がおもしろかったのにと思うのですが。
そして、なんとか数寄矢会に近づき、若頭日浦に気に入られて、兄弟となるところからの本編も、ひたすらのりだけで走り続ける。敵対する蜂之巣会のダイヤモンドの歯をいれた若頭との因縁の対決も、全体の物語の中で引き立ってこない。クドカン脚本の欠点が目立った結果になったのがもったいない。
結局、麻薬取引の方法を聞きだすサスペンスも、薄められ、ラストの犬の背中に乗せて陸揚げするというどんでん返しも、ばかばかしいほどの驚かせるものにならず、全体が平坦な物語になってしまった。
エピローグで日浦が独立し、玲二を若頭にして大阪に乗り込むというエンディングさえ、爽快感に欠けてしまいました。
決しておもしろくないわけではないし、いつもの三池崇史ワールドも宮藤官九郎ワールドも十分でているのですが、どうも、はじけ切れていなかった。