くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アイコ十六歳」

アイコ十六歳

とにかく、キラキラと輝くような映画で、みずみずしい富田靖子の存在感が光る青春映画の一本。たわいのない物語の中に、恋、友情、死、大人の世界、揺れ動く女心等々がちりばめられてます。

主人公アイコが自分の家の屋根に登るのをカメラがクレーンで追いかける。ラストもこのシーンで締めくくる。

高校一年生のアイコの夏休み直前から始まり、夏休みの出来事、クラブ活動、合宿、同級生との諍いなどが淡々と語られていく。

最初に、登場人物が説明されるが、ほとんど関係がない。原作があるので原作では、そのあたりが重要になるのだろうが、映画では、そんな部分はすっ飛ばして、次から次にエピソードが羅列されていく。

そして、常に物語は夏に焦点を絞っているのも特徴で、冬や春、秋の景色やシーンはワンカットもない。幼なじみの元彼が暴走族にいることで心配の電話をしてみたり、危うい女心もきっちりと描き、東京からきた美しい先生の自殺騒ぎから、終盤、暴走族の青年が目の前で事故死するのを目撃、「もうだれも死んでほしくない」と泣き叫び母親に抱きつくクライマックスから、一転して、明るく高校生活するアイコのシーンへつなぎ、屋根に登るシーンでエンディング。

もちろん、時代性は隠せないのですが、水に反射する光の輝きのような、純粋さときらめきが全編に満ちあふれている。今では、こんなピュアな作品も作れなくなったような気がするなと、時の流れを寂しく感じる一本でした。