くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「家路」(2014年版)

家路

非常に、生真面目で素直な映画で、特に自分のメッセージを押しつけるでもなく、といって、全く無味乾燥な映像でもない。その意味でとっても好感な作品でした。

はたして、危険だからといって、一概に立ち入り禁止することが本当の政策なのでしょうか?それは、見方を変えれば、人間らしい心が欠如した選択なのではないでしょうか。震災から三年たつ今となって、そういう意識が芽生えてきたいるのだと思います。その意味で、この作品の物語は、ゆっくりと、それを考え直すに十分な出来映えでした。

監督はドキュメンタリー出身の久保田直というひとです。

物語は、家を出ていった主人公次郎が、今は立ち入り禁止になっている被災地の自宅に戻ってくるところから始まります。一人、草だらけの農地を起こし始め、米をといで自炊を始める。

一方で、兄総一は、母と、妻、子供と仮設住宅で暮らしている。この二人を交互に描きながら、時にフラッシュバックして、震災前の彼らを映し出していく。

次郎が、自宅に戻ったことを知った総一が家を訪ね、次郎の提案で、母親を次郎と一緒に住むようにする。

間道を、母親を連れていく次郎のシーンから、やがて二人で田植えをするシーンへ。巡回の警官が二人を見つけるが、黙って帰っていく。このシーンが実に良い。母が言う「静かだね。どうしたんだろう?」次郎「なにも変わってないよ」そう、なにも変わってないのかもしれない。

ドキュメンタリー出身監督らしい、真正面から素直に構えるカメラが、純粋に、被災地を追われたある家族を語っていく。そこには、法的な対応とか、賠償金の問題とか、もちろん、原発の是非の問題など全く表立たせず、生身の人間の心を丁寧に描いていく。

震災から三年目、今、本当の対策を考えるべきと気なのかもしれません。