カントリーミュージックをバックに、散文詩のような語り口で描かれる、切ない男と女の物語。かすみにかかったテキサスの風景が、日差しを逆光でとらえたカメラを多用した構図で美しく映されていきます。監督はデヴィッド・ロウリー。
主人公のボブとルースは恋人同士ですが、窃盗、強盗を繰り返しながら生活をしている。ある日、ルースがボブに妊娠したことを告げ、最後の仕事と思っていた強盗が、警察との銃撃戦になりルースが一人の警官を撃ってしまう。その身代わりに逮捕されたボブ。
やがて、女の子が産まれたルースだが、ルースが撃った警官で、その傷も癒えて、ルースを見守るパトリックとの間には、ほのかな恋うまれる。
そんなときボブが脱獄し、物語は急展開していくが、語り口が淡々としているので、なぜ、バブが、ならず者たちに追われるのか、埋めていた金の出所などが、こちらに明確に伝わらないままにストーリーが進む。
やがて、ルースを迎えに来たボブだが、彼を追ってきた男たちに撃たれ、瀕死のまま、娘の5歳の誕生日をした日に、お祝いに来ていたパトリックとルースのいる部屋にころがり込む。そして、静かに部屋を出るパトリック。ルースは今にも息を引き取りそうなボブを胸に抱いて「待っていたのよ」とつぶやく。エンディング。
静かに進んでいく話なので、非常に地味ではあるが、とっても良質な一本で、全体に隙のない作品です。
ボブからの手紙に、「迎えに来る前に町を出ることにします」という手紙を父に託し、ボブに届けるようにするルースの決意が、ラストの切ないエンディングにつながるあたりの組立も、非常に美しい。
1970年代のテキサスの空気が漂う中の、一昔前のウエスタンをみているような感動を覚える一本でした。