くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ハウンター」「ポール・ヴァーホーヴェン/トリック」「チ

ハウンター

「ハウンター」
鬼才ヴィンチェンゾ・ナタリ監督、アビゲイル・ブレスリン主演のシチュエーションホラー。「未体験ゾーンの映画たち」でみる。

正直、観客をそっちのけにして、自らの感性で突っ走る映像展開に、途中からなにが何かわからない。とは言いながら、冒頭の蝶々の舞うシーンに始まる映像は、ちょっとしたもの。
さらに、人物の姿をゆっくりと横に移動するカメラがとらえていき、壁を越えると真上からの構図に変わったりと、テクニカルにワーキングを繰り返すなど、カメラテクニックのおもしろさは絶品。

映画は主人公リサが、弟ロビーからのトランシーバーを通してのモーニングコールから始まる。そして、母親に洗濯を頼まれ、洗濯物がなくなっているという会話、家族の朝食屁と続く。そして、そのシーンが何度も繰り返す。

なにかおかしい?と私たち同様リサが気がつき、洗濯機の後ろをのぞくと、そこにドアを見つける。一方、何かを見つけたリサに、なにやら謎の男が近づく。

さらに、奇妙な訪問者がやってきたり、これ以上入り込むなと言う電話等々、不気味な影が彼女に忍び寄り始める。

実は、彼女たち一家は死んでいるらしい。殺人鬼が、父親を操って、一家を皆殺しにした様である。しかも、その殺人鬼は、昔から女の子を誘拐しては殺戮していたらしいという記事をリサが見つけたりするのだが、いかんせん、カメラワークのおもしろさは堪能するのだが、リサが、謎に気がつき、敢然と立ち向かう後半部分が、何のことかわからなくなってくる。

無事、家族を光の中に送り出し、オリビアという女の子を助け、殺人鬼を焼き殺すクライマックスへの展開が、まるで、ロシアの人形のごとく、入れ子入れ子を繰り返し、意味がつながらない。

驚愕の真実の理解は、たぶん正しいのだろうが、死んでしまったリサたちはいったいオリビアを助けたのか?オリビアは生きているのか?オリビアが言うところのこっちの世界というのは何なのか?というお話。

アビゲイル・ブレスリンのアップが何度もでてくるので、それはそれでいいのかもしれないが、いかんせん、抽象的な物語だった。懲りすぎているというか、シュールな世界というか、さすが、ヴィンセント・ナダリである。

感性だけで感じ取るホラー映画という感じの一本でした。


ポール・ヴァーホーヴェン/トリック」
前半が、ドキュメントタッチで、これから上映する映画のメイキングを、監督自らが一人が一人でドキュメントしていく。

そして始まる本編は、軽いタッチのシニカルコメディで、アメリカンテイストなお話ですが、これがなかなかおもしろい。

映画は、会社を経営し、よき父であるが女好きのレムコの誕生パーティにはじまり、そこへ、元愛人のナジャが訪ねてくる。

彼女は妊娠していて、後に実はレムコの子供だと告白され、それを種に、レムコの共同経営者ヴィジャから、会社売却に同意するように迫られる。

一方レムコの娘、その友達、そして兄も絡んでくるのだが、実はレムコが今つきあっているのが、娘の友達である。

パーティの日に、娘が、ナジャが実は妊娠しているのは嘘だと見抜いて、それを母に知らせ、あわや、強制的に会社売却させられるところを救われるクライマックスとなる。

そして、レムコが妻を食事に誘い、そこで妊娠したことを告げられ、そして、妻に「父親はね・・・」とにんまりされて暗転。苦笑いする笑いで締めくくる秀作で、50分枠とはいえ、なかなかウィットの効いた、テンポのよい展開がとってもすばらしい一本でした。


チェインド
デヴィッド・リンチの娘ジェニファー・リンチ監督作品というのが売りの猟奇殺人を描いたホラーサスペンス、のはずなのだが、あれよあれよという、無理だらけの展開とラストシーンのどんでん返しに、呆気にとられた映画だった。

閑散とした家の中をゆっくりとカメラが移動していく。一人の少年ティムがなにやら免許証らしきものを手にしている。そこへチャイムの音、1、2、3・・とつぶやきながら玄関に急ぐティム。どあをあけると一人の男ボブが女を引きずって入ってくる。ティムはテーブルの下に隠れ、女はボブに奥へつれて行かれ、悲鳴。この導入部は抜群にすばらしく、わくわくさせる映像感性にうなる。

そして、8ヶ月前。ティムと母親が車で映画を見に行き、その帰り乗ったタクシーが、ボブという異常な男。広大な大地の一軒家につれて行かれ、母は殺され、ティムは「ラビット」と名付けられて、飼われるように拉致される。

ボブは、女をさらってきては、レイプし、殺す。奴隷のようにティムをこき使う。ティムの足には鎖を。そして、10年がたつ。って、ここからかなりの無理な展開。いったい、10年間もそれを繰り返していたの?しかも、青年になったティムにボブは、「勉強しろ!」と体の本を勉強させる。一方で、まるで父親のような振る舞い。

いや、ボブって異常者じゃないの?とおもっていたら、ティムを大人にするために、好みの女を見つけてやるが、その女を殺してみろというし、しかし、好きあれば逃げようとティムは考えていたらしく、その連れてきた女アンジーを巧みに助け、ボブをやっつける。って、この10年、そんな暇無かったの?

で、ティムは、とある男、というか父親に会いに行くが、父は別の女と結婚していて、実はティムと母親をないがしろにするために、ボブに頼んだという手紙を見つけていた。そして、父を殺し、でていくティム。ボブの家についたティムの姿で暗転、エンディング。

あれ???というラスト。全く、何ともコメントできない物語だった。映像も、冒頭はおもしろいものの、ほかはふつうだし、ボブの幼い頃のトラウマのシーンも、何の意味もないし、とにかくジェニファー・リンチの名前だけで公開する映画だった気がする。