くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「オズの魔法使」「1/11じゅういちぶんのいち」「パイオニア

オズの魔法使

オズの魔法使
ほぼ35年ぶりにスクリーンで見直しました。しかも今回はデジタルリマスター版、カラーフィルムのテスト映画といわれているものの、あのサイケデリックなほどの豊富な色彩セットは、夢見心地にしてくれますね。しかも、名曲「虹の彼方に」は私のスクリーンミュージックのベストワン。

今更いうまでもない、ライマン・フランク・ボームの名作のミュージカル映画化、今なお、オリジナルのリメイクはなされないほどに、その出来映えは最高と呼べる一本ですね。

黄色い道をたどるときに、踊りながら進むドロシーたちのシーンは、思わず、一緒に口ずさみ、足でリズムを取ってしまいました。もちろん、オープニングの「虹の彼方に」は、ほとんど一緒に歌うこともできます。

これでもかというほどの、豊かな色彩セットの中にまっ黄色な道が、エメラルドの城まで続いていく。ストーリーは原作を踏襲しているのですが、ミュージカルナンバーの楽しさと、ジュディ・ガーランドの愛くるしさが夢の世界に誘ってくれます。

これが1939年、一触即発の世界大戦直前の映画なのですから、全くアメリカはすごいものですね。

何度みても、いや、スクリーンでみてこそのクラシック映画の名作を、もう一度大画面でみることができて、本当に良かった。


「1/11じゅういちぶんのいち」
最近流行の人気コミックの実写映画版。監督は片岡翔という人である。

全く、期待もしていないし、時間が余ったのでみた程度の映画なのですが、これが、ちょっとした小品ながら、ちょっとした映画でした。特に、後半から終盤、映画になってきて、うならせるあたり、なかなかのおもしろさがあったような気がする。

一人の少年がサッカーボールを見つめているシーンに始まる。カメラは延々と長回しで、その彼方の高校生たちの姿をとらえていく。この映画の主人公ソラはサッカークラブを作るべく人数を集めている。一方で、演劇に情熱を燃やす演劇部の姿、そんな熱い同級生を冷たく見つめ、嘲笑する今時の高校生たちが群像劇のように描かれていく。かたわらに一人、彼らにカメラを向けるカメラオタクの少女。「キラキラ」を撮っているつぶやく。

映画は前半、ソラがサッカー部を作るべくチラシを撒き、勧誘をしている姿をかぶりながら、それぞれの少年たちの今をスクリーンに繰り返し繰り返し映し出すのだが、そこに、今の自分の立ち位置への疑問、将来の夢への不安などが見え隠れするのです。

最初は、誰が主人公で、誰がキーマンかわからないので、なんとも真抜けた脚本だと見ていきます。カメラも、時に長回しを使った流れる映像も見られ、その演出にも、どこか稚拙な印象を持ち始める。

ところが、サッカー部が11人そろい、試合ができるようになった時点で、映画は後半に入り、突然、ソラの一ヶ月前へと飛ぶのです。ええZ?今からフラッシュバック?と思うのだが、ここからどんどん良くなる。

ソラが広場でサッカーで遊ぶ少年たちを見ている。実はソラの子供時代なのだが、それは最後までわからない。そこへ、天才といわれ、なでしこジャパンに入った四季というサッカー少女が現れる。ソラは一ヶ月前は、サッカーなどやめる決意をしていたのである。

そしてソラは四季と話をし、サッカーで遊び、中学の時のOB戦に駈けていく。ソラはもう一度サッカーをすることを決意して、タイトルがバンとでると、おおお!と思うのです。この映画ただ者ではないと。

そして、OB戦から帰ったソラは、テレビで四季が飛行機事故で死んだことを知る。さっきまで話をしていたはずなのに。しかも、母から、四季というのは、子供の頃一緒にサッカーで遊んだ幼なじみだと知る。

冒頭のサッカーボールは、四季が両親の離婚で引っ越すときに、記念に二人の顔をかいたボールだった。

そして、時はサッカー部の初試合。ソラが走っていく。前半部分で登場した演劇部の少女、野球部の少年、カメラを構える少女等々の笑顔、さらにはソラの両親、四季の母親などなどの笑顔が映され、映画は終わる。エンドクレジットに流れる歌声が、これもまたいいのです。

つまらない映画だと高をくくって見始めたのに、意外な良さに、もっとちゃんと見れば良かったのか?と後悔さえ感じてしまう、ちょっとした作品でした。素直に、良かった。


「パイオニア
未体験ゾーンの映画たちの一本を見る。監督はエーリク・ショルビャルグという北欧の人である。

最初に、実話を元にしているというテロップが流れる。北海で大規模な油田が発見され、その輸送のためのパイプラインを引くために、ノルウェーアメリカの援助を得て、その作業に取りかかった流れが、ドキュメントタッチの映像で描かれていく。

非常に丁寧な演出と、しっかりとした脚本で、まじめに描かれていくサスペンス映画ですが、正直、ふつうの映画だった気がします。

主人公ペッターと兄クヌートらダイバーたちが減圧訓練をしているシーンに始まります。リアリティ満点に描かれるこのシーンは、緊迫感十分で、この後、深海に潜り、物語の本編である、事故により、クヌートが死亡、ペッターに嫌疑が掛かるという展開に効果を発揮します。

事故に疑問を持ったペッターが、実はガスがうまく送られなかったのか、空気が一瞬途切れたために、ペッターが意識を失ってしまったという人為的なものであると追求していく。そこに、担当の部署の人々の暗躍、命もねらわれながら、やがて誰も信用できなくなっていくサスペンスは、なかなかのものです。

結局、国営企業アメリカの援助無く、独自の開発へと進んでいくきっかけになった事件だったことが、ラストでテロップされます。

作品としては、きまじめな映画で、自国の繁栄のきっかけだったと自画自賛して終わるラストシーンがなんとも鼻につきますが、クオリティはそこそこのものだった気がします。あとは、嫌いな深海ものだったことだけです。