くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「そこのみて光輝く」「シャドウハンター」

そこのみて光輝く

「そこのみて光輝く」
全編が、沈んだようなストーリー展開に、決して浮き上がりようがない演出ゆえか、とにかく二時間が非常に長い。延々と前に進まないように見えるが、ゆっくり、きわめてゆっくり物語は前進しているのです。

監督は呉美保、主演は綾野剛と、大好きな池脇千鶴。まぁ、昨年の「凶悪」といい、最近、池脇千鶴はしっかりと存在感を示しはじめ、その実力を発揮してきたように思える。それは本当にファンとしてはうれしい限りです。

物語は函館を舞台にした佐藤泰志原作の小説である。

かつて、ダイナマイトの事故で同僚を亡くし、そのトラウマの中で山を下り、一人生活をする達夫。ある日、パチンコ屋でライターを与えた拓児と親しくなり、彼の家で自らの体を売って家計を支える千夏と知り合う。

千夏には地元の造園会社の社長の愛人という立場もあり、その社長の口利きで仮釈放の拓児を支えているというのもある。

千夏たちの父親は、脳梗塞で寝たきりだが、異常なくらいに性欲が強く、頻繁に妻を呼んでは処理させようとするが、嫌気がさしている妻も放ったらかしで、そんな母に代わって千夏が処理してやっている。

とにかく、ストーリーが暗い。どこにも救いがないように思える設定が、冒頭はほとんど説明もなく本編に流れていくので、その唐突な演出にくたびれるのだが、そのうち、達夫は千夏に惹かれ、千夏もあきらめていたささやかな幸福を達夫に見いだしていく。ところが、千夏との仲が終わるのを未練がましい造園会社の社長は、別れを言いだした千夏を無理矢理連れ出し、暴行、それを知った拓児は、達夫と山へ行く仕事を楽しみにしていたにも関わらず、社長を刺し、自首する。

せっかく見えた幸福も費えたと思った千夏は、父を絞め殺そうとするが、すんでのところで達夫が駆けつけ、二人は夜明けの海岸で見つめあってエンディング。二人にほんのわずかに刺した幸福の光が包んでいるかのように見えなくもない、余りに悲しいラストシーンである。いや、希望の見えたラストシーンかもしれない。

唐突な演出とカットで一気に物語を語っていく映像は、なかなか個性的だが、内容を見せるには今一歩弱く、唯一、明るいキャラクターでストーリーにリズムを生むべく存在する、菅田将暉扮する拓児に、もうちょっと極端な演出を施してもよかったかもしれない。

それぞれのキャラクターが平坦に描かれたために、淡々としたストーリーにテンポが生まれなかった。凡作ではないものの、今一歩物足りない。池脇千鶴のもの悲しくも、女の幸せをどこかに見いだそうする微妙さもちょっと生きてこなかった。


「シャドウハンター」
非常に面倒くさい組立になっているホラーアクション映画である。原作があるとはいえ、原作で説明されている部分をすべてカットしたエピソードもあり、?となるところが満載。その上、物語があれもこれもというキャラクターの関係が入り交じっていてややこしい。それを全部描いたから、肝心のストーリーの核が見えなくて、なんで、主人公たちが騒いでいて、なにを敵にしているのかわからなくなって、派手なクライマックスでエンディング。

とひえ、主人公クラリーを演じたリリー・コリンズがなかなかの美少女でかわいいから、彼女を見ているだけで、まぁいいかという映画だった。

ニューヨークで暮らすクラリーの母ジョスリンは、実はこの世に存在する吸血鬼や人狼、妖魔の世界を知るシャドウハンターと呼ばれる特殊能力のある女性で、ある日、彼女が隠し持つ聖盃をねらって、闇の存在がおそってくる。ジョスリンは何かの液体を飲んで気を失い(この液体の説明がないのだ)、連れさられた母を探すために、クラリーはシャドウハンターの美少年ジョイス、友達のサイモンとシャドウハンターの隠れ家ボーンシティへ行くという展開。

そこで、妖魔をこの世に呼び出して、シャドウハンターの純血を守ろうとするヴァレンタインや、人狼のルークなどが入り乱れ始める。

実はヴァレンタインはクラリーの父で、ジョイスはクラリーの兄で、という真相が終盤に登場し、クラリーたちを見守るルークはいったいどの立場?と思わせながらも、クライマックスのバトルシーンへ。

そして、大乱闘の末、危機が去って、エンディング。

結局、聖盃を飲めといわれた終盤のヴァレンタインのクラリーへの命令も、結局反故になり、妖魔を封じるのがメインのラストで、本当に、原作を知らないものには、混乱。

まあ、気楽に見るアクションと割り切って楽しめばいいかなという映画だった。