くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「穴」(ジャック・ベッケル監督)「K2 初登頂の真実」「

穴

「穴」(ジャック・ベッケル監督版)
TUTAYA発掘映画で、ここ50年近く劇場公開された覚えのない名作を見ることができました。

物語は、いわゆる、脱獄物で、ストーリーは非常にシンプル。一人の若いガスパードが、8号棟からから、物語の舞台の11号棟へ移ってくるところから始まる。

すでに11号棟では脱獄の計画が進んでいる。新入りを信用するかという不安の中、部屋の隅に穴を掘り始める。

物語はほとんどこの中の五人の物語で、掘り進んで、地下道をランプを持って、逃げ道の確認をする人物を真っ暗な画面の中、ポツンと穴があいたように浮かび上がる二人のショットが移動するシーンが見事である。

大脱走」のような、スペクタクルな物語ではないが、緊迫感あふれる室内のシーン、のぞき窓を使って、看守の動向を小さな鏡で確認しながらの穴掘りのシーン、時間を計るためにガラス瓶で作る砂時計のエピソードなど、一つ一つが手作りのおもしろさを堪能させてくれます。

そして、いよいよ結構の日、ガスパードが所長に呼ばれ、まもなく釈放されるという話を持ちかけられ、そのまま、二時間後に戻ってくる。しかし彼もまた脱走するという。一時はガスパードを疑うのだが、最後は信用し、いよいよ脱獄の時間、準備万端整ったところで、のぞき窓でチェックしていた鏡に、大勢の看守が写り込み、ばれたことがわかる。果たしてガスパードがリークしたのかは最後までわからないが、彼をのぞく四人が裸にされて廊下にたたされる。ガスパードは所長から独房入りを命じられ、暗転エンディング。

信用されたかに見せる、狸おやじの所長の計画に乗せられたガスパードが、計画を漏らしてしまい、それでも、所長はガスパードを独房に放り込むというサスペンスが、一方に漂わせるストーリー構成もうまい。

映像づくりの緊迫感、影と光を巧みに使った画面づくりのうまさ、人物をクローズアップでとらえる緊張感など、隅々まで練り込まれたカメラマン、ギスラン・クロッケの映像が実に見事な作品で、二時間あまりが決して、気をゆるむことなくみることができる。

ヨーロッパ映画特有の空気が漂う、サスペンス映画の傑作と呼べる一本だと思います。


「K2 初登頂の真実」
イタリアが、1954年に行ったK2初登頂の記録を、史実に基づいて丁寧に描いてく、いわば登山物映画である。

二度の世界大戦で、敗北したイタリアは、世界に国の存在を示すために、まだ世界がなしとげていないK2初登頂の計画を始める。

苦難の末に、成功したが、その影に、参加した登山家たちの、人間ドラマが隠されていたというのが物語のテーマである。

特に映像が凝っているとかいう物はなく、肝心の人間ドラマも迫力ある演出が施されているわけでもない。普通の映画だといえばそれまでだが、偉業といわれた歴史の史実の影に存在する真実の物語を、こういう映画という媒体で知ることの価値を理解すべき一本だったと思います。


「ライヴ」
最低最悪の映画に久しぶりに出会った。もともと山田悠介という作家は好きではない。その原作を元にしているのだから、それだけでも、最悪なのだが、角川書店65周年記念作品なのだから少しは・・と思ったら大間違い。角川書店も落ちたものだ。

原作をストーリーの中のキーブックに選び、そのストーリーで謎解きしながら物語が展開する。訳の分からない不条理な導入部と、中途半端なエログロ、欲目にみれば、「キック・アス」やロジャー・コーマン作品や香港映画的といえなくもないが、いかにも、適当すぎる。

しかもワイドスクリーンなのだから、観客をバカにしてる。適当なエロシーンを導入部にちりばめ、途中のグロテスクな殺戮シーンも、全く爽快感もない演出。たしかに、そんな適当さ故に、最後まで飽きずにみれるのだから不思議でもある。

物語やせりふが陳腐すぎるのは原作の弱さだろうが、もうちょっと、映画館を意識した作品が作れないものかと思う。最低だった。