くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」「フォルツァ・バス

インサイドルーウィンデイヴィス

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」
一人のミュージシャンの6日間をコーエン兄弟独特の、ファンタジックな描き方でつづった物語。ストーリー自体はシンプルに、せりふやシーンに繰り返しを多用した演出が、映像として昇華された物語に独特のオリジナリティを生み出しています。ただ、平坦に近い展開は、さすがに、しんどいところもないわけではない。

映画は主人公ルーウィンがガスライトというバーの舞台で歌っているシーンに始まる。外にでると一人の男が彼に、昨日ヤジを投げたのを怒って殴る。目が覚めると、世話になっている大学教授の先生の家。飼い猫に起こされ、外にでようとした隙に猫も逃げてしまう。そのまま、元カノのジーンのところへ。彼女は別の男性を引き入れていて、妊娠したとメモを渡される。

逃げた猫が絶妙のタイミングで擬人化されてルーウィンに絡むところが、コーエン兄弟らしい演出。

ルーウィンにはかつて、マイクという相棒がいたが、彼が自殺し、ソロで歌っている。しかし、今一つ目がでなくて、その日の寝る場所も、友人を転々としているのだ。

物語は、そんな彼の転々としながら、シカゴへ行き、また戻ってくるまでを描く。

途中に出会ったミュージシャンたちとのひとときのステージや、何かのきっかけで、ミュージシャンとして一人立ちするチャンスをもとめる彼の姿がストーリーのメインだが、そこに、いかにもな情熱や意気込みは描かれない。それはマイクの死を引きずっているのかは、微妙な描写にとどまっている。ジーンとの妊娠のやりとりで、機関銃のように悪態をつくジーンのせりふとの掛け合いが最高に笑える。

ただ、姉とのエピソード、父とのエピソードなど、どうでもいい部分はかなり省略した描き方に徹しているために、気になる人には、ここに人間ドラマが不足しているという感想が入るかもしれない。

ニューヨークに戻ってきたルーウィンは、ガスライトへ行き、そこで、カントリーを歌うおばさんにヤジを送る。
翌日、ルーウィンは再びガスライトの舞台で歌う。歌い終わると、オーナーから、客が待ってるといわれ店の裏に行くと一人の男がいて、彼を殴る。夕べヤジを投げた相手は自分の女房だと捨てぜりふして消える。

再び、冒頭シーンと同じく目覚め、家を出るとき、猫がでていかないように、とめ、そのまま町へ。エンディング。

ひとときのドラマを軽いタッチでユーモア満点に描いた、という解説がぴったりの一本でしたが、いつものコーエン色がくっきりでる作品ではなかった気がします。でも、クオリティの高い一本でした。



フォルツァバスティア祝際の島」
小さな島バスティアのワールドカップ出場にわく姿をとらえたドキュメンタリーである。
これという感想も書けない短編でした。




「郵便配達の学校」
ジャック・タチが、郵便配達に扮して繰り広げるドタバタ劇で、郵便の運送の飛行機が約30分早くなったために、その時間をカバーするべく、さまざまに配達人たちに工夫を依頼する。

主人公の配達人が、自転車に乗って、例によって、サイレント映画的な笑いをちりばめながら、最後は、飛行機に間に合わず、その後尾に鞄をぶら下げてエンディング。

いつものドタバタ劇で、のどかな農村の中を疾走する自転車のスピード感と、人々のスローな生活のリズムの繰り返しに、ストーリーのリズムを組み込む演出が楽しい一本。


「のんき大将 脱線の巻[完全版]」
とある農村の村に、お祭りのために移動サーカスのごとき馬車がやってくるところから映画が始まる。

祭りに浮かれる村長、彼にあわせる人々のコミカルなシーン。そんな様子を語る、山羊を連れた老婆のシーンが独特の色合いをもたらすが、途中から、ジャック・タチ扮する郵便配達のフランソワが加わり、ストーリーはどんどんドタバタ劇に拍車がかかる。

ポールをたてる導入部から、村人たちにからかわれて飲まされる下り、などが展開。しかし終盤は、「郵便配達の学校」で使われたようなシーンがそのまんま挿入され、どういうことなの?とその流れを見つめてしまう。

ほとんど同じシーンを繰り返すが、その合間に、本来の村人たちの姿や、祭りの後の風景、見せ物小屋でやっていたアメリカの郵便配達人のアクロバットスタントのような配達姿に触発されるフランソワの姿、などなども入るが、微妙に適当さも見えなくもない。

さすがに、最後の飛行機の場面はないものの、祭りのイベントのメリーゴーラウンドが分解され、その馬を積んだトラックを追いかける子供のショットなど情緒を生み出す。

やはり、制作順で見た方がジャック・タチのおもしろさの流れが見えて楽しかったかもしれない。