くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「her世界でひとつの彼女」「オールド・ボーイ(米国版)

kurawan2014-07-01

「her世界でひとつの彼女」
とってもファンタジックで、洒落た映像ででつづる、近未来のラブストーリー。今時といえる感じのオリジナリティあふれる作品ですが、なんといっても、その映像の美しさは特筆ものでした。

映画は、主人公セオドアが真正面にこちらを見ている画面から始まります。時は近未来、PCの究極系であるユビキタスが完了し、キーボードは存在せず、会話だけで、PC交信することができる。セオドアは手紙を代筆する会社に勤めていて、その感性豊かな文章が人気。カメラは、そういう社内の空気をゆっくりととらえていく。

愛する妻キャサリンと別居し、消沈した日々を送るセオドアは、ある日、最新鋭の人工知能によってプログラムされた「OS1」というシステムに興味を持ち、自分のパソコンからサインインする。そのOSはサマンサという名前を持ち、人間に近い微妙なニュアンスも完璧にこなし、みるみるセオドアは彼女に恋をしていく。このサマンサの声をするのがスカーレット・ヨハンソン。彼女はこの演技で見事、アカデミー賞にノミネートされたのだが、納得のすばらしい演技力を発揮する。

サマンサに惹かれていくセオドアだが、別れた妻キャサリンの影がことあるごとに脳裏をかすめる。柔らかい赤や黄色の色彩を中心にした近未来の画面が実に美しいし、セオドアの服装も、柔らかい赤、黄色の服を着せることで、洗練された未来の姿を描写する。

均整のとれた構図を多用し、どこか、機械的な配置なのだが、前述の色彩演出の効果と見事にコラボレートし、冷たさを感じないところがうまい。

ところが、進化を続けるサマンサは、セオドアとの肉体的な接点を求め、SEXの代理人さえも世話をする。さらに、セオドアのすてきな手紙をまとめて、出版社に送り、出版化を企画する。次第に、その能力は進化を続け、ある日、一瞬、セオドアとサマンサが途切れてしまう。それは、能力が進化したサマンサはセオドア以外にも600人以上の恋人と、どうしに8000人以上との会話さえ可能になった現実をセオドアに知らしめることになる。

やがて、人知を越えた存在になりつつあるサマンサはセオドアから離れていく。セオドアは、離婚届けにサインしたものの、愛するキャサリンへの思いを手紙に書き、送信、同じく、夫と別れ消沈しているエイミーと、会社の屋上で夜景を見ながら寄り添ってエンディング。

二人が見つめる夜景もまた、不思議なくらいにファンタジックな光の演出が施され、夢物語のようなラストシーンを生み出している。

ほとんどが、ホアキン・フェニックス扮するセオドアの一人芝居のような展開になるので、時に、退屈になりそうなものである。しかし、そこは、動きのある演出と、こった色彩映像、巧みに挿入されるサマンサとの不可思議な行動のエピソードを盛り込んで、決して退屈させないおもしろさを生み出していきます。

今時といえば、今時、今でこそ通用する題材の物語かもしれませんが、昨日見た「トライセンデンス」と好対象にさえ見えるピュアな物語は、必見の一本だと思います。

個性的な作品を発表するスパイク・ジョーンズ監督作品としては、これまで見たうちで一番良かった気がします。



オールド・ボーイアメリカ版)」
カンヌ映画祭でグランプリを取った韓国版のリメイク。

実はオリジナル版のストーリーはほとんど覚えていなかったが、さすがにアメリカ版になると、ストーリーが分かりやすくなっている。監督はスパイク・リーなので、彼独特の、人物をとらえたまま、背景だけが変わるというようなカメラワークが見られるとはいえ、根本的な金槌などの小道具や、横に移動しながらの金槌による敵とのアクションシーンは韓国版同様の演出が施されている。

ただ、やはり、韓国版にあった、おどろおどろしさというのは、どこかファンタジックに、非現実的に見えるのは、アメリカ的といえなくもない。

ストーリーは、アル中のさえないビジネスマンジョーは、ある日、酔っぱらって中国人街で妙なおもちゃを買う。その直後、友人のチャックの店に行き、断られてふらついていると、見知らぬ黄色い傘を持った女に近づいた後、意識を失う。

気がつくと、モーテルのような部屋に監禁されている。定期的に差し入れられる食事、テレビ映像で時間の流れが語られ、やがて20年。その間に妻マギーが夫ジョーに惨殺された事件があり、ジョーは犯人に。ただ、愛する娘に会いたい一心で、必死で体の衰えを押さえ、逃げ出す手段も考え、実行に移す日、眠らされ目が覚めると、草原の真ん中。黄色い傘の女を見つけ、ついていくと、診療活動をするマリーとで会う。

やがて、チャッキーの店に行き、マリーと共に、監禁した犯人への復讐と娘ネアに会うべく奔走していく。

やがて見えてきた真実。学生時代に目撃した事件を発端に、ジョーへの復讐劇が行われていたこと。娘と思っていたネアは架空の人物で、本当はマリーが娘であり、真実探求の課程で、愛し合って体をあわせてしまったことを知らされ、再度、ジョーは自ら監禁室へ向かってエンディング。

日本のコミックが原作なので、ストーリーの基本はほぼ同じでだが、ストーリー展開のテンポはアメリカ版の方がストレートにわかりやすい。正直、韓国版よりミステリーとして楽しめた気がします。

ただ、やはり原作の味は韓国版の方がしっかりしていると思うし、監禁が15年であったり、5日以内に真相を見つけなければいけないというようなストーリーのスピード感はオリジナル版に軍配が上がります。