くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「インベーダー・ミッション」「あいときぼうのまち」

kurawan2014-07-04

「インベーダー・ミッション」
題名からして、B級のSFミステリーかと思っていたら、これが全然違う。イラク戦争を背景にした戦争ミステリーだった。

物語は2004年イラクに始まる。軍医として従軍しているスペイン軍の大尉パブロと相棒のディアゴ

ある日、負傷したイラクの民間女性の治療で遅れたために、アメリカ軍の護衛で、移動することになる。ところがその移動の途中で、地雷にやられ、瀕死で二人は脱出。とある民家に逃げ込む。しかし、その家の男に襲われた彼らは思わず、家族を撃ち殺し、パブロ本人も重傷を負う。

そして、病院で気がついたパブロは、一部の記憶が消えていた。徐々に思い出す記憶の中に、イラクで起こった真実が露わになってくる。

カットとカットの転換編集が、実にうまい演出で、細かい緊張感あふれるシーンをつないだ後に、すっと広い広野を写したり、美しい日差しの逆光のカットなどを挿入。この緊張と緩和のリズム感がうまいために、物語全体は単調なのに、非常に充実した映像テンポを生み出しているのである。

思い出すにつれ、相棒のディアゴから衝撃の事実を聞かされる。

瀕死のパブロはディアゴの機転で、銃で撃ったイラク人の血液を輸血して助かり、直後、アメリカ軍兵士がきて、救出される。しかし、アメリカ軍は、その家の民間人をすべて皆殺しにしていて、その様子をディエアゴは携帯の動画に納めているというのだ。

すべてを隠そうとする政府の追っ手が迫り、やがて、ディアゴは殺され、パブロに迫るが、すんでのところで、動画を新聞社に転送、家族ともども助かるが、パブロは投獄される。物語はここで終わるが、いったい、正義感あふれるパブロの勝利だったのかは不明である。

作品全体の出来映えは、前述のカット編集のうまさを評価すべき完成度であり、何気ない物語がそれなりのレベルに仕上がったのは、なかなかの佳作だったと思う。


「あいときぼうのまち」
この手のプロパガンダ映画というのは、基本みないのであるが、最近の下手な商業映画よりも、しっかりとした映画のセオリーに乗っ取った映像がたまにあるので、みてみた。

確かに、福島原発への批判、震災被害への悲哀をその根底に描いた作品であるが、しっかりとしたプロット立てができており、1945年という第二次大戦末期、福島原発が建設されようとしている1966年、そして、2011年から2012年にかけての震災前後の物語を、ひとつの家族の歴史として描きながら、モノクロ、セピア色、カラー映像と、画面処理に工夫をしたそれぞれの物語を、何度も、さりげなく交錯させ手描く演出の手腕は確かなものだと思う。

ただ、悪くいえば、何の変哲もない作品だというのもひとつの感想である。確かに、メッセージをしっかりと伝えるのが目的の作品なのだからこれでいいのだが、映画ファンとしては物足りない。

とはいえ、映画としての画面づくりになっているし、ラストのホルンの調べがそれぞれの時代に響いていくというシーンは映画的だと呼べる。

ひたすら、原発を非難したり、東電を非難したりする一辺倒に描かなかったのも、まぁ、許せる範囲だったし、つまりは自然災害が根本的な原因である、という視線も崩さなかったのはよかったのではないでしょうか。