くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「大佛開眼」「ぼくを探しに」

kurawan2014-08-12

「大佛開眼」
衣笠貞之助監督が描く歴史絵巻。スタンダードサイズながら、雨の影を壁に映しだしてみたり、木々の隙間を通して背景を映し出してみたり、あるいは、人物の前後を極端な奥行きの配置でとらえてみたりと、構図づくりが実に美しい一本でした。

物語は、日本国内の安定のために、国を挙げて留紗那佛建立を決定し、工事が開始されるが、反対派の妨害が次々と実行に移され、そのたびに工事が危機に陥る様を描く展開になっている。

主演は長谷川一夫で、彫刻師国人を演じている。開眼に描く仏像の絵のショット、さらに山肌に仏像を彫っていくシーンなど、豪快な映像が目を引く演出で、傍らに彼に寄り添いながら、次第に大佛に魅せられていく国人に嫉妬を見せる麻夜賣を演じる京マチ子がやたら妖艶で、彩りを添える。

画面いっぱいにとらえられる建立途中の留紗那物のセット、傍らでめまぐるしくうごめく人足の姿など、大作にふさわしい豪華な画面は、当時大ヒットしたことが納得させられるほどに見事である。

もちろん、衣笠貞之助の演出の手腕も見事で、大作故に散漫になることなく、ストーリー展開と、映像のコラボレーションを見事に作り出していく。

クライマックス、行碁の死から、一度は中止になりかけた大佛建立が再会され、最後の妨害をくい止めるべく自ら犠牲になり、重傷をおった国人が、大佛の開眼法要を見ながら死に、残された麻夜賣が大佛の上で狂ったように舞い、踊り、泣きじゃくってのエンディングとなる。

大作ではあるがしっかりと作られたなかなかの一品で、スタンダードサイズとは思えない画面づくりに圧倒される作品でした。


「ぼくを探しに」
イリュージョニスト」を手がけたシルバン・ショメ監督初の実写映画である。

非常にファンタジックで、ある意味「アメリ」を彷彿とさせる映像の反乱という作品であるが、冒頭のタイトルバックのシーンをのぞいて、ストーリーテリングにほんのわずかにリズムのずれが見える気がする。

映画は、主人公ポールが両親の後を追う形で、乳母車に乗っているポールの視線、テンポのよい音楽で前を歩く父、タイトルが終わると、父はじっと壁を見つめている。ポールがなにやらしゃべりだそうとする。母が「パパと言いそうよ」と父に声をかけ、父が振り返ってポールを驚かせ、パパと言う暇を与えなかったカット。そして物語は本編へ。

二歳の時に両親が事故に遭い、その後しゃべれなくなったポールは、姉妹の叔母に育てられ、ピアニストとして大成するようにかわいがられている。しかし、両親がなぜ死んだのかは映像の中で語られない。

目の見えない老人の調律師、螺旋階段、狭いアパートの入り口などが、とっても非現実な趣の画面が続く。

ある日、調律師が入っていった、階段の途中の一室に行くと、そこにプルーストという婦人がいて、彼女に勧められるままに紅茶を飲むと、ポールは意識を失い、何か幻想的というか、記憶の奥深くへ誘われる。

この現実とも、非現実ともいう展開を繰り返し、ポールには恋人も出来、ピアノコンクールへと流れる物語が展開する。

剥製を作る医者、巨大な蛙の楽隊、公園にある巨大な木、俯瞰で見据える螺旋階段、部屋中に広がるプルースト婦人の部屋の植物、など、感性のままに描かれる映像が、とってもシュールでファンタジック。

ポールの様子に不振を持った姉妹が、プルースト婦人を訪ね、問いつめ、つかみ合いをする。影で見せるこのシーン。プルースト婦人のかつらがとれ、実は彼女は抗ガン剤で髪の毛がないことが描写され、とたんに現実的な背景が見えてくるのだが、この後、コンクールで、ポールは蛙の楽隊が見え、それに併せて演奏して優勝。しかし、プルースト婦人はいずこかへ消え、紅茶セットを調律師から手渡されるポール。

それを飲むと幻想世界にはいるが、コンクールの後、祝賀会までの短時間で、その薬を飲もうと粉ごと含むと、なんと、記憶の底の世界で、実は両親はポールの目の前で二階から落ちてきたピアノの下敷きで死んだ真相を見る。しかも二階には姉妹の叔母が。

違法改造をした部屋のために、強度が落ちてピアノが落ちたという真実。祝賀会でピアノを弾こうとして、ピアノのふたがポールの指を砕き、プルースト婦人はガンで亡くなり、プルースト婦人のウクレレをお墓に持っていったポール。雨水がウクレレを鳴らし、まるでプルースト婦人が語るかのように、ウクレレで音楽を続けなさいと言う声を聞いたポール。そしてかれはウクレレを楽しく弾き音楽を再開する。

やがて恋人と結婚し、子供と散歩する。妻が「パパと言いそうよ」という。ポールがオープニングの父親よろしく、赤ちゃんに向かいそして「パパ」と言葉を発する。エンディング。

映像は、CGを多用した非現実的な画面、ファンタジックな構図、その独創的な映像の中で、ポールが、やがて過去の物語に正面から目を向け、受け入れ、立ち直る姿を描く。ちょっとした一品ですが、好き嫌いが分かれるかもしれない作品ですね。