機関銃のように繰り出されるせりふの掛け合いと、ハイスピードで展開するストーリー、あれよあれよという間にどんどん物語が先へ先へ進み、ちりばめられた毒のあるカットなど、吹っ飛ばしていく迫力に、一見、女たちの打算のかたまり、男たちのふがいなさの誇大妄想などというものを、どこ吹く風で笑い飛ばしてしまう。
驚くようなクローズアップや、極端なパンフォーカスを多用し、スクリーンから飛びださんまでの勢いで突っ走る作品のエネルギーに、これぞ増村保造とうなってしまう。
そんな秀逸そのものの、映画、それがこの「最高殊勲夫人」である。
映画は、会社の三人の息子たちと、彼らに順番に嫁いでいく三人の姉妹の物語。冒頭、次男が次女と結婚する披露宴のシーンに始まり、三男が三女と絶対結婚せずに、もがき、あがき、コミカルにすり抜けていこうとする小さな反抗が本編になる。
ふつうに、友達や同僚の前でプロポーズし、自分に気を向けようとし、露骨に、何でも仕切る長女の姉に反抗する。
そこに、妙な暗さなどは全くなく、屈託のない表情とせりふで、めまぐるしいテンポで自分の気持ちを訴える様が痛快ともいえるおもしろさがある。
しかし、結局悪あがきしていたはずの三男と三女は、実はお互い好き同士で結婚したかったという本音が飛び出し、二人の披露宴の席がラストシーン。
「来年はお姉さんを飛び越えて最高殊勲夫人になってやる」と豪語する三女のストップモーションでエンディング。これぞ増村保造作品の醍醐味である。