くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「花宵道中」「シャトーブリアンからの手紙」

kurawan2014-11-17

花宵道中
裸身をさらして、大胆な演技で、その存在感と、芸歴が生み出す実力をスクリーンに発揮してがんばった安達祐実だが、もう少し早くこういう体当たりをするべきだったなと思う。

確かに、人形のようなクリクリした容貌は、この手の時代劇にはぴったりなのだが、背が低いために、大スクリーンで映えないのである。そこは女優の経験でカバーしても、さすがに女郎の姿でこってりメイクしたときはともかく、普通メイクのシーンではさすがに年齢を隠しきれなかった。

物語は、吉原で、男に簡単になびかないことと、体が火照ると花びらのような痣が体にちりばめられることで有名な朝霧の物語。

母親に折檻された幼少時代の経験の結果、まるでちりばめられたように赤い花が咲く体を持つ。幼いときに吉原の人気女郎霧里に拾われ、一人前に女郎になるが、霧里は身請け先で死んでしまう。

ある祭りの日、朝霧は着物職人の半次郎と出会い恋に落ちてしまう。この半次郎は霧里の弟で、姉がなぜ死んだのかを、身請け先の吉田屋を探りにきていたのだ。

そして、吉田屋こそ、朝霧を女にした男で、その因縁が三人の人生を狂わせていく。

結局、女を道具にして殺した吉田屋を半次郎が、宴席で刺し殺し、逃げるものの、念願だった花魁道中をさせるために朝霧のところに戻ってきて捕まる。

そして、打ち首になった半次郎の後を追って朝霧も身を投げるという結末。

オープニングは、なんとも貧相な映像で、どうなることかと思ったものの、原作がいいのか、徐々に貫禄を取り戻し、ラストシーンへなだれ込む。しかし、脇のキャストが、非常に活舌が悪く、吉原の高級女郎という貫禄が全くでず、ただの、夜鷹がきれいな着物を着ている程度にしか見えない。

結果、絢爛たる場面が貧弱になり、朝霧と半次郎の情念の部分もぼかす結果となった。

監督は、豊島圭介という人だが、とても、この手の過去の名作に足元にも及ばなかったといえる。

よく頑張っている作品だが、全体が弱い。それにつきる一本だった。


シャトーブリアンからの手紙
第二次大戦下、ドイツ占領地区のフランスで、一人のドイツ将校が暗殺され、その報復にヒトラーは収容所のフランス人150人の銃殺を命令。フランス人のみならずパリ司令部のドイツ司令部さえも、その極端な指令に反発、回避を画策するもかなえられず、執行される。その中に17歳の少年ギィ・モケがいた。この少年が戦後伝説となったという実話を元に描いた反戦映画である。

監督はフォルカー・シュレンドルフ。将校や収容所のフランス人など苦悩する人々を斜めの構図で緊迫感あふれる演出をし、クライマックスで、題名にもなった、リストに選ばれた人々が、最後の手紙を認めるシーンを、つぶやくような言葉をナレーションで響かせる。

さらに、クライマックス、三回に分けて機械的に銃殺される模様を俯瞰でとらえた無味乾燥なカットは、強烈にその悲劇を伝えてくる。

銃殺隊の一人の軍人が、一回目の銃殺の後、引きつけを起こし、次の人々がつながれる姿を見上げるシーンが、恐ろしい緊迫感を呼ぶ。

ギィ・モケの悲劇がきっかけだが、物語は、この少年一人だけでなく、周辺の様々な人々も丁寧に演出し、生き生きとしたドラマに仕上げた演出はさすがといわざるを得ない。

とはいっても、日本人にはほとんど知られていない史実であり、映画祭で話題になるほどの強烈なインパクトはなかった。

作品の完成度は見事なものだが、さすがに重い。いい映画だが、重い。