くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ニューヨークの巴里夫(パリジャン)」「暮れ逢い」

kurawan2014-12-24

「ニューヨークの巴里夫(パリジャン)」
とってもしゃれた大人のラブストーリー。映像のテンポ、画面づくりの粋さ、展開の妙味、登場人物の魅力、不思議な感じに引き込まれていく映画でした。楽しかったし、ラストは、素直によかったなと思えた。監督はセドリック・クラピッシュです。

三部作の完結編ということだが、前二部はみていない。それでも十分に楽しめるし、今回のお話に過去があると思うだけでもよけいに感じいるものがある。

映画は主人公グザヴィエが、二人の子供を連れてかけてくるところから始まる。軽いリズムの音楽に映像が軽やかに飛び跳ねるこのファーストシーンがとってもいい。

脚本家としてそれなりに成功しているグザヴィエだが、ニューヨークに出張に行った妻ウェンディが、帰るなり、向こうに恋人ができたという。そして、子供を連れてニューヨークへ。それをおって、友人でレズビアンのイザベルを頼ってグザヴィエもニューヨークへ。

そこで、イザベルの為に精子提供したり、中国人と偽装結婚したり、さらにはイザベルも浮気をするわ、かつての恋人マルティーヌが訪ねてくるわと、てんやわんやの物語に発展していく。

しかし、決して、沈み込んだり、諍いや言い合いの繰り返しなどのシーンは全くなく、淡々とコミカルに、不器用なグザヴィエの右往左往が描かれ、最後は、ほんとうに愛していたのはかつての恋人マルティーヌだと息子に諭されて、パリに帰ろうとする彼女を引き留め、めでたしめでたし。

グザヴィエにも息子と娘、マルティーヌも息子と娘という設定、レズであるイザベルが若い女に浮気するというふつうのエピソード、いかにもな中国人の偽装結婚、さらに、ウェンディの登場など、どれをとっても、見事に絡み合い、もつれ合い、それでいて、グザヴィエの周りを取り囲んで、暖かく接している。

地下鉄のホームで、三人の女に囲まれるグザヴィエのショットが実にいいし、ラストで、一端は送り出したマルティーヌのことが気がかりで、悩んでいる父の姿を見た息子のトムが、連れ戻さないといけないと、父の背中を押すラストも素敵。

ほんとうに、外国のラブストーリーはこういう大人の恋がさりげなく描かれるからいいですね。とっても素敵な秀作でした。


暮れ逢い
パトリス・ルコント監督作品なので、もう少し奇抜なラストシーンを期待したが、意外にふつうのラブストーリーだった。

原作があるのだからある意味、大幅な改変は効かないのかもしれないが、最後の最後まで、引っ張って引っ張っていくプラトニックな恋物語を、さりげないカットを挿入しながら、さらにいたたまれなくなる映像として描いていく手腕は、パトリス・ルコントならではの筆致である。

映画は実業家ホフマイスターの会社の溶鉱炉のカットから始まる。そこへ入社した若き青年フリドリック、社長の秘書として入ったが、その仕事ぶりからみるみる社長の目を引き、さらに、病を抱える社長の素顔を知るに及んで、個人秘書として社長の屋敷に住むことになる。そして、そこで、ホフマイスターの美しい妻ロッテに出会うのだ。

物語の発端から、ハイテンポで本編へなだれ込み、じわじわとフリドリックとロッテが心を近づけていく様が描写される。時折、窓から覗くホフマイスターの姿などを挿入し、展開していく様はまさにパトリス・ルコントの世界である。

やがて、メキシコでの事業を提案したフリドリックは、ホフマイスターの命でメキシコに二年行くことになる。ロッテは悲しむが、夫に秘密の関係をばらすわけにいかず二人は別れる。程なくして第一次大戦が起こる。

こうして、8年にもわたるロッテとフリドリックの純愛が始まるが、ここへ至るまでがやや長いために、このクライマックスが妙に間延びしてしまう。そして、ホフマイスターは死に際にロッテに、二人の関係を知っていたこと、嫉妬のために二人を引き裂いてしまったことをわびる。

やがて戦争が終わり、フリドリックは帰ってくる。しかし、二人の間にはすでにかつての若き純愛の心は薄れ、お互い大人になっていた。そして、二人は安宿に泊まり、かつての思い出の場所で初めてキスをする。シルエットで描写された映像でエンディング。

全体にバランスが悪いのだろう。ロッテとフリドリックの出会い、二人の関係の盛り上がり、別れ、再会、この構成が良くないのかも知れない。クオリティは悪くないものの、秀でたものもあまり感じられない作品だった。