「悪名 縄張り荒らし」
大映のシリーズのリメイク版で、田宮次郎の役を北大路欣也が演じている。原作がいいというのもあるが、やっぱりおもしろい。東宝の宮川一夫のカメラが美しく、赤や、青の日本的な色合いのガラスを多用した画面が美しい。
物語は、オリジナルシリーズの第一話と第二話を組み合わせたもので、後半がやや雑に見えるのですが、それはさておいても、オリジナルの空気は、勝新太郎の圧倒的な存在感で最後まで引っ張っていく。
しかも、杉村春子を始め、周辺の脇役が実に見事で、その迫力にもこの作品への思い入れが感じられる一本でした。
それにしても、こういう男気というのは廃れてしまいましたね。ちょっと寂しい感じがしてしまう。古き日本の世界のようなものをかいま見てしまう映画でした。でも、おもしろかったし、ラストも感動してしまいました。
エロあり、アクションありの典型的な娯楽時代劇で、ストーリー展開の雑さは、まさに当時の映画産業斜陽期の典型である。
宮川一夫のカメラも特に秀でていないし、増村保造の演出のさえもない一本。
やたら、仰々しくでてくる勝新太郎のカリスマに支えられているだけの映画で、わめき散らしているだけで、それ以上がない。
エロ映画まるだしの、拷問シーンが続く前半部分から、いかにもな役人の悪行の数々を暴いてやっつける後半部まで、ただ、凡凡と進む。正直、退屈だったが、これも映画晩年期、時代劇晩年期の一本である。
「動脈列島」
清水一行原作の社会派サスペンスを、白坂依志夫と増村保造監督が脚本を書いた作品で、とにかく出だしからラストまでおもしろい。
娯楽映画としてよくできた一本という感じの映画で、犯人秋山と警察側のエリート滝川との頭脳戦がとにかくサスペンスフルで、緊張が途切れないおもしろさがある。
ふんだんに使った新幹線の疾走シーンが、作品のリズムを盛り上げ、緊迫感を持続させる映像演出もすばらしく、オープニングの騒音に苦しむ住民のカットから、一気に秋山が新幹線の爆破を計画するまでの本編への流れも非常にスピーディ。
おきまりの脇役の上層部にも、まだまだ層が厚かった当時のベテラン俳優を配置し、さらに女優たちも、つかず離れず主人公による適度な存在にとどめたさりげなさもみごと。増村保造にしては、女より男のドラマに仕上げたあたりは、やはり、当時の増村監督の存在位置が微妙に変わっていることが伺える。
今みれば、若干、弱い部分もみられるが、それは原作の弱点という感じで、映画としてはなかなかの快作二仕上がっていたと思います。おもしろかった。