様々な映画祭で絶賛された話題作で、プルシアンブルーを基調にした、押さえたカラーで全編を覆い、静かな音楽で淡々と語るちょっとした佳作でした。ラストは一気に泣いてしまい感動してしまいました。監督はウベルト・パゾリーニである。
民生委員として、役所で身よりのない死者を丁寧に葬儀埋葬する仕事をしているジョン・メイが、様々な埋葬方法や音楽趣向を施して、それぞれの死者に最良の葬儀を執り行っているシーンから映画が始まる。
ある日、向かいにすんでいたビリー・ストークという男が亡くなっていることが知らされ、折しも、ジョンのこだわりすぎる効率の悪い仕事ぶりに、とうとう解雇が言い渡される。
ジョンはビリーの葬儀を最後の仕事と言い渡され、たまたま遺品の中にあったアルバムを元に、ビリーの娘ケリーを探し始める。
その課程で、親友であったジャンボや路上生活時代の知人たちに出会い、葬儀に出席できたらと迫るが、どうも芳しくない。
ジョンは、自分の家族の墓地をビリーに譲り、墓石も段取りをして、せめて自分だけでもと最後の仕事にかける。
すべて段取りをして、自分が寄り添うべく、仕事場で首をつろうと考えたところへケリーから電話。葬儀にでるという。そして、葬儀の後ジョンに会いたいというのだ。
自分の最後の仕事がうまくいったことと、ケリーへのほのかな恋心に浮き立つジョンは、ケリーへの犬のマグカップのプレゼントを買って、いそいそ出かけるが、交通事故で死んでしまう。
葬儀の日、ビリーの墓地にはケリーを始め、路上生活者、ジャンボなどジョンが訪ね歩いて出会った人々が集う。しかし、ケリーはジョンの死を知らない。
一方、墓地もなくしたジョンはその日、ビリーの傍らを棺桶が運ばれ、無縁墓地の場所に葬られる。
すべて終わった後、ジョンの埋葬されたところに、過去、彼が携わった人たちの幻影が集まってきてエンディング。
淡々と描かれる終盤までの映像は、静で地味である。色彩も画面の構図、音楽も押さえられ、展開も慎ましいが、ラストに一気に映像が飛躍し、エンディングへ流れ込む構成のうまさに、涙があふれてくるのです。傑作とかいう仰々しいものではなく、静に、心に響いてくる秀作というイメージの一本でした。