行かないつもりだったが、信頼できる映画友達が絶賛したので、急遽出かけた。監督は「モンスター」の大丸明子である。
泣いた。泣きました。一番前の席で涙が止まりませんでした。良かった。
深夜の時報とともに、映像が幕を開ける。深夜までマンガを書いている主人公鮎子。東京から岡山に転校してきた彼女は、地元のお嬢様女子校へ通うことになる。
古くさいほどのしきたりに縛られた高校の姿をコミカルに描いた後、鮎子は、クラスの美少女武美と友達になる。鮎子には遠距離のヒデホという彼氏がいて、ヒデホと鮎子の物語をそのまま鮎子はマンガにしていた。そして、たまたま、武美がそのマンガを見て、すっかり気に入ってしまう。
映画は、鮎子と武美の高校生活の甘酸っぱい青春ストーリーに、30年後、漫画家になった鮎子が高校の創立記念日にやってくる場面とを交互に重ね合わせながら描かれていく。
誰もが経験した懐かしい高校時代。そして誰もが経験したかもしれない親友との出会い、別れ、初恋、夢。それらが、絶妙の映像のモザイクの組立で描かれる。そのなんともいえない切なさに、どんどん引き込まれていくのである。
大人になった鮎子は、そこで別れ別れになっていた武美と再会。そして、鮎子は武美から、ヒデホくんなんていなかったんでしょ?といわれる。そう、ヒデホというのは鮎子が生み出した架空の恋人だった。
さらに、武美は元々、心臓が悪く、手術をしたことを知らされる。
若さに突っ走っていた学生時代には、お互いが気がつく暇もなく、毎日を楽しんでいた。しかし、その背後に、いろんな秘密が存在したのです。
高校時代の鮎子はある日、一人の高校生と知り合い、恋に落ちる。一方でヒデホに夢中になっていく武美に、真実を話せないもどかしさから、鮎子は武美に素っ気なくしてしまう。そして、武美が広島に引っ越すことになる直前のクリスマスイブに喧嘩をして別れてしまうのです。
ほんの些細な行き違い。そんな、まさか、そんな、という誰にでもあり得る諍いが、一生の後悔になるかもしれない瞬間を、現在と過去を交えた映像が見事に映し出していきます。
そして、創立記念日。会場に急ぐ鮎子。一方、疲れから、前日入院していた武美は、急変して亡くなってしまう。
演壇で叫ぶ鮎子の場面と、会場へ行く途中で出会う、後輩の女子高生がだぶり、物語は、何ともいえない切なさと甘酸っぱさに包まれてエンディングを迎えます。
もう、言葉にできない感動に包まれる一本。とっても、とっても、とっても良かった。