くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「妻への家路」

kurawan2015-03-06

チャン・イーモウ監督がひさしぶりにコン・リーと組んだ人間ドラマ。とにかく、コン・リーの圧倒的な演技力に支えられた作品だった気がします。

物語は、いきなりの列車シーン。一人の男が線路の脇に隠れている場面に始まる。カットが変わって主人公ワンイーの娘タンタンがバレエの稽古をしている。時は1977年、文化大革命まっただ中。右派メンバーとして収容されている父イエンチーが脱走したという知らせが届く。冒頭の男がそのイエンチーである。

妻のワンイーのもとにイエンチーがやってくるが、家に入れない。イエンチーは翌朝の8時に駅で会いたいという手紙を残して去る。しかし、その手紙をタンタンは役人に教えるのである。

駅で待つイエンチーの元に、ワンイーが会いに来る場面が緊張感がすばらしい。タンタンがワンイーを阻止するために追いかける。見つからないようにイエンチーがワンイーを呼ぶが、とたんに役人に捕まる。そして、時は3年がたち文化大革命が終わる。

はれて釈放されたイエンチーなのだが、ワンイーは一年前から、記憶が不安定で、夫の顔を認識できない。そんなワンイーに何とか認識させようとするイエンチーのもの悲しい話が中心になる。

イエンチーからの手が澪ワンイーに届け、その手紙を読むことで、ワンイーの芝にいることになるイエンチー。毎月5日にはイエンチーを迎えに駅に出かけるワンイー。

そして何年かが過ぎ、それぞれに老年の息となっている。それでも、ワンイーの病状は回復せず、そんな彼女に寄り添って、自転車につけた車に乗せて駅につれていくイエンチーの姿でエンディング。

出口が見えないままに、ありきたりなラストシーンで感動を呼ぼうとしなかった。ある意味、チャン・イーモウの演出力と、演技者の演技力が会ってこそ成り立つ作品で、若干それぞれのエピソードがとってつけたように立ち消えテイクあたりの弱さが気になるが、それなりのクオリティがあるのはさすがだと思える。良質の一本だったと思います。