くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「さいはてにて やさしい香りと待ちながら」「花とアリス殺

kurawan2015-03-09

「さいはてにて やさしい香りと待ちながら」
地味で緩い映画である。どこへ向かう物語なのかよくわからないままに、だらだらと展開するストーリーが、やがて、ラストシーンを迎える。監督は台湾のチアン・ショウチン。

一人の少女岬が、父と船小屋の下で過ごしているシーンから始まる。そして、場面が変わって大人になった岬。父と別れて30年、父は漁師で、船が難破して行方不明になったままである。その父が残した唯一の財産が能登半島にある船小屋で、岬は、父を待つためにその船小屋にやってきて、コーヒー豆の販売を始める。

こうして物語は始まるが、向かいに、さびれた民宿があり、シングルマザーの絵里子がすんでいて、子供が二人いる。

この子供たち家族と岬との交流を描く人間ドラマだが、前半は絵里子の家族の物語、後半は、岬が待つ父の物語と、どうもしっくりストーリーがまとまらない。しかも、絵里子の愛人のような男が当たり前のような最低男だったり、子供たちの学校での話、さらに、岬の父の元船友達の家族との交流など、あちこちにエピソードが飛ぶ。

結局、いったん、能登を離れた岬が再び帰ってくるラストシーンで締めくくるが、どうも、読めない映画である。

永作博美を見たいための一本なので、かまわないのだが、余りに普通の映画だった。


花とアリス殺人事件」
岩井俊二監督の「花とアリス」の前日談のお話で、初アニメである。

淡色の押さえたカラーの画面と、ぎこちないほどにシンプルなキャラクター、そして、「花とアリス」の蒼井優鈴木杏の声で描かれる物語は、何とも不思議なストーリー。

二人が出会うまでを描いた話なので、「花とアリス」を知っているものには、なるほどと思わせ、そうでない人には、中学生たちのどこか不安定な心理を、危うい演出で描いた作品ととらえることになる。

映画は、主人公有栖川徹子が、東京から田舎の中学校に転校してくるところから始まる。向かいの家に、窓から覗いている一人の引きこもり少女、つまり花がすんでいる。

学校では、湯田という少年が殺されたという妙な噂があり、こじつけたようなクラス内の学校伝説が描かれ、それにこじつけるように、アリスは花に近づくことになる。

実は花は、幼なじみの湯田に、婚姻届けなる妙な告白?いたずら?をされ、その腹いせに蜂を背中に入れてやった。ちょうどのその日、彼は転校、彼があの蜂が原因で死んだというクラスの噂を気にしていたのだ。

その噂を確かめるために、アリスと湯田の転居先に出かけ、無事を確認するために、一夜を過ごすというファンタジックな物語が後半となる。

そして、帰り道、花は今も湯田が好きなのだという、ちょっと甘酸っぱいラストシーンで、岩井俊二らしい少女趣味がでてエンディング。

さすがに、アニメは、まだまだ不得意というか、実写映画で感じる、危ういラブストーリーは物足りないが、これもまた岩井俊二の映画というムードが漂う一本でした。