くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「忘れないと誓ったぼくがいた」「サムライフ」

kurawan2015-03-30

「忘れないと誓ったぼくがいた」
こういう青春ファンタジーというのは大好きなので、ちょっと、感動を期待して見に行ったが、余りに投げやりすぎる物語、脚本、演出に正直、参ってしまった。

しかも、主演の村川虹郎という男の子がとにかくへたくそで、せりふが、ただの読み上げているだけ、仕草が、ただ、ト書きをなぞっているだけ、これは明らかに本人の力量以前に、演出がなされていないのである。

その上、間延びした構成と、行き着くところのないストーリー、でてくるキャラクターの存在が生きていない。

映画は、主人公葉山タカシが一人の少女織部あずさと夜の道でぶつかるシーンに始まる。まるで初めての出会いのようなファーストシーンだが、ここから二人の偶然の出会いを何度かつなぐうちに、彼女は、相手の記憶に数時間しか残らない不思議な少女だと説明される。

そのまま、このあずさの悲しい運命をいくつかのエピソードでつづっていき、ラストのタカシがパソコンの動画の中に、実はあずさと一年前の二年生の時からつきあっていることが判明。さらに誕生日の9月1日にデートする約束に気づき、その場所に行くと、あずさの代理だと、あずさ本人がタカシに別れを伝える。

しかしタカシの携帯の裏のプリクラにあずさの写真を見つけたタカシは、今のがあずさだと後を追いかけるが、見あたらないで暗転エンディング。

あずさの父親の意味深なカットや、タカシに告白してくる同級生など、ちらほらでてくるエピソードも結末を描かず、あずさの物語の真相もないままに終わる。

こういう、不可思議なお話はそれはそれでいいのだが、今回は独りよがりすぎて、ちょっとひどすぎないかなと思った。映画としてのオープニングのぶつかる場面の構図など美しかったのに、その後の弱さがとにかく残念な一本だった。


「サムライフ」
期待していなかったが、思いの外いい映画だった。実話であるが、そのことに固執せず、映画として完成されている脚本がうまいし、それに応えた監督の森谷雄の力も評価できる映画でした。

主人公長岡が、一軒のアパートにやってくる。母親にほうっとかれ、学校に来ない幼い姉弟のところにやってきて、家を掃除し、一緒にご飯を食べる。こうして、映画は幕を開ける。

これだけだと、熱血教師の夢実現物語、しかも、実話と引いてしまうが、ここから軽いタッチで笑いのペーソスを随所に挟み込みながら、一方でカウンセリングの現場で悩む彼をとらえていく展開が実にうまい。

本編は、不登校児のカウセリングをしている教師の彼が、自分で生き方を見つけられる学校を作ろうと、夢に向けて動き出すところから始まる。

すべてをなげうち、背水の陣で臨んだ彼のナレーションから、かつての教え子達が集まってくる展開へ。そして、自伝本の販売で奔走する彼らのコミカルな展開。一方で、時にくじけそうになる長岡の苦悩を描いていく。

この陰と陽のバランスのうまさ、練られたせりふの細かいうまさ、周囲に登場する人物の描き分けのうまさ、一番苦労していたであろう長岡の妻の描き方、などなど、実にまとまってストーリーが進んでいく。

美談の実話なので、下手をすると、説教じみた教育映画になるところだが、俳優陣の見事なキャラクター創造が成功し、物語にはまった存在感もおもしろく、ラストの開校式のクライマックスに駆けつける妻のカットもうまい。

これはなかなかの佳作だった気がします。